磨騎 鴉。
□〈狼と魔女〉
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「・・・お前はいつもここで寝ているな」
「えぇ。私の森だもの」
「私の事が怖くないのか?」
白狼は不思議だった。亜人が多く住まう森の中になぜ魔女が一人だけいるのか。
主である自分が姿を現しても去るどころか怯えることもない。
「ぷっ、あんたが怖いですって!バカじゃないの?白狼の坊や。
私は人外。あんたなんかより力を持ってる。あんたを恐れるのは森の奴らと人間くらいよ」
魔女はケタケタと笑いながら言い
「私はあんたなんか全然怖くないわ」
笑いながらそう言った。
「ふっ笑えるようになったのだな。メラ。先代が亡くなってから元気がなかったものな」
「な!別に!元気だったわよ!それにいつの話よ!」
魔女にとって数年という月日は瞬くような時と一緒で、忘れそうになっていた。
「うるさい婆さんがいなくなってせいせいしてるわ!
それに私は寂しくないもの!」
「そうか・・・。お前は、一人でも平気か」
「もちろん。平気よ!」
「そうか。お前は、寂しくないのだな・・・」
白狼は寂しそうな顔を浮かべた。
この森では皆、群れを持つ。魔女と白狼だけが森で独りぼっちだった。
「話は終わり?私、日没草採りに行きたいんだけど」
そろそろ日没。日没にしか咲かない花。薬草になる。
夜になると閉じてしまうから咲いてるうちに取りに行きたい。
魔女は箒を手にし白狼に訊いた。
「あぁ。・・・それだけだ。変なことをきいたな」
「別にヒマつぶしにはなったわ。それじゃ行くわ」
魔女は箒にまたがり地を蹴りつけ空へ飛び出した。
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