BELONG
□―空と雨と海と―
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ゲームの世界に入ってからしばらくして、柚貴が時計台へと案内し歩き進む。
「獣道ですけど大丈夫ですかぁ」
「背の高い組ファイトォ〜!」
男性としては小柄である柚貴、時雨、雷音は平均180pの巨人3人を置いて行きそうなスピードで歩く。
「お前らわざと枝が多い所を通ってないか?」
「え〜知らなーい!」
影郎の声に笑いながら答える雷音にあ、わざとだなぁと心で思いながらみんな歩いた。
「そろそろ見えてきますよ!」
柚貴が出口らしき灯りを指差す。ガサガサとみなで出ていくと以前の様に静かな空間が広がっていた。
「ここかい・・・?」
「何かすごいなぁ!」
「中に入ってみよう!」
雷音を先頭に時計台の中に入っていく。中には廊下が真っ直ぐに広がり、壁に沿って左右に扉が3つあり、一番奥に扉があるだけだった。
手前の部屋から調べてみるも時計が2、3個あるだけ。他の部屋も同じような状態で特に変わった様子は無かった。
「一番奥は何があるかな?」
柚貴が一番奥の扉を開けると長ソファーとテーブル。大きめな暖炉と大きな古時計が置かれていた。
「なんか特に変わった所もないね」
「・・・なんだったんだろ・・・」
前来た時のあの引き込まれるような感覚は何だったのか・・・。テルのマップを見ると確かに■マークと重なることから何かあるはずなのだ。
「あの・・・この暖炉おかしいですよ?」
「なにがー?」
雷音は長ソファーに座りながら暖炉を見る時雨に視線を向けた。
「一度でも使われたのなら煤がついているはずなんですけど、使われた形跡がないんです」
「掃除しただけちゃうか?」
「それは・・・どうでしょうか?」
時雨がまた何か気付いたのか首を傾げる。
「ん?どしたの?」
柚貴は時雨に近づき彼が指さした先を見る。そこには白い文字でY RV F\そう書かれていた。
「何の事だろ?」
柚貴が首を傾げると鋼弥がケータイを取り出し写真を撮った。
「こういうのはメモや写真で残すとあとで役
に立つんだぞ」
「ゲームじゃないんだから」
「一応ゲームだろ」
「んじゃコウヤ解読よろしくね!」
「任せろ」
柚貴はまた暖炉の文字を見る。白い字を指で軽く触ると白い粉が指に着いた。
「?チョーク?」
「チョークの字が何でここに?」
「チョークなんて文具屋に行けば買えるだろ」
「そうだよね」
雷音、影郎、志舞樹も加わり5人で考える。漣は他に何かないか周りを散策していた。
「・・・もしかして、消す必要があったとか?」
「だとしたらなんでその必要がある?」
「それは分からないけど・・・」
話していると古時計がゴーンゴーンゴーンと夕方の5時を知らせた。
「・・・。あ、分かったかも」
鋼弥がそう声を上げると扉から人が入ってきた。皆驚いて顔を扉に向けるとそこにはウサギ、犬、猫それぞれの被り物をかぶった3人がそこにいた。
「・・・誰?」
雷音がマヌケな声で訊くと被り物の3人は一礼した。
「管理者クイーン、ジャック、エースです。今すぐここから退室してください。キングからのお言葉です」
「キング?」
柚貴たちを招待した人物。このゲームに大きくかかわってるであろう人物だ。
「キングがなんでオレらを止めるの?ここで何しようがオレらの勝手でしょ?」
「そうもいかないこともあります」
「なんでさ」
「子供には知らなくていい事もあるんです」
「そんなんじゃ納得できないよ。ちゃんと理由をいいなよ」
「説明する義理はない」
「・・・あっれ〜大人のくせに説明できないの〜?ちゃんとした大人なら子供なオレらを納得させれる説明ができるんじゃないの〜?」
雷音が3人と対峙している間に柚貴は白い文字を出来る限り消す。丁度、鋼弥や漣達が壁の様になっているため見つかることはなさそうに見えた。
「ねぇねぇどうしたの?物分かりの悪いお子様を納得させてみてよ」
『・・・』
挑発しても何も返って来ない。だんまりだ。それを見て文字を隠し終えた柚貴がコソコソと暖炉の端に座り雷音に声を掛けた。
「らいおんさん。きっと彼らにとって自分たちはただの異物なんですよ。戦って無駄に疲れるだけなら彼らの言う通り出ていった方が得策じゃないですか?」
座りながらいう柚貴に被り物の3人は柚貴を探し見る。被り物のせいでどんな表情をしているかはわからなかったが、柚貴は3人に鼻で笑った様な表情を向けた。
「・・・そうだねー。柚ちゃんが言うならそれでもいいかな」
「じゃ、退散しましょ、そぉしましょ♪」
2人の言葉に皆動き出す。被り物の3人はじっと待つだけで柚貴たちには何もしてこなかった。
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