短編
□可愛い君が。
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旅の途中での休憩。
綺麗で澄んだ声が響く。
ミレーユ「あらレック。薬草が切れてるわ。私ちょっと買ってくるわね。」
レック「あぁ頼むよ。」
そう言って綺麗な長い金髪を揺らして町へ歩いていくミレーユ。
『はぁ…』
男の人はああいう大人な女の人が好きなんだろうな…。
きっとレックもそうだ。
それなのに私ときたら…。
なんて子供っぽいんだろう。
ミレーユみたいなミステリアスさは一欠けらもないし、バーバラみたいに積極的なわけでもない。
そう思うとまた溜息が出そうになる。
そんな私に気付いたのか、レックが心配そうに声を掛けてきた。
レック「ミキ、大丈夫か?何だか元気がないみたいだけど。」
『そんなことないよ。大丈夫、何でもないよ。』
レック「それならいいんだけど…。」
こんなことでレックに心配かけちゃ駄目だな。
そうだ!
いつもと服装を変えてみよう。
***
『これならちょっとは大人な女の人に近付いたかな…?』
少し前にミレーユと買ったロングスカート。
そして履き慣れないハイヒール。
自分には似合わないと思ってずっと袋に入れたままだったんだよね。
恥ずかしいけど、頑張ってレックに見せよう。
『う、うーん…歩きづらいなぁ…』
ハイヒールがぐらぐらする…。
しかもスカートで足元が上手く見えない…。
そしてついにやってしまった。
足元がふらつき、さらにスカートの裾を踏んでしまったのだ。
『きゃっ…』
ヤバい、転ぶ…!
そう思った瞬間、私はたくましい腕に抱き留められた。
『レック!』
レック「ふぅ…危なかった。」
嘘…!!
何でここに…!?
レック「休憩が終わっても帰って来ないと思ったら…ミキ、そんな格好して一体何やってたんだ?」
『そ、それは…』
あなたに振り向いて欲しくて頑張ってました、なんて言えるわけがない。
レック「あれ?言えないの?そっかぁ…俺にも言えないんだ。」
『え!?ま、待って!違うよ!言うよ!』
私が焦って必死に言うと、レックは勝ち誇った顔して振り向いた。
しかし私はそれに気付かず、本当のことを言った。
『…ミレーユみたいな大人の女の人になりたかったの。』
レック「は?大人の女の人?何でまた。」
『だ、だってレックも大人の女の人が好みなんでしょ?』
レック「はぁ?俺そんなこと言ったっけ。」
『言ってないけど…男の人は皆そういうものなんじゃないの?』
私が遠慮がちにそう聞くとレックは一瞬ポカンとしたが、すぐに笑顔になって私の頭を撫でた。
レック「何言ってんだよ。俺は大人な女より、ミキみたいな可愛い子の方が好みだよ。」
でもそれならバーバラの方が…と言おうとしたが、言えなかった。
レックのキスで口を塞がれたから。
突然のことに驚いていると
レック「ったく…お前鈍すぎ。俺にはミキだけなんだよ。俺のために無理して慣れない格好する程可愛いミキだけ。分かったか?」
私はもう黙って頷くのが精一杯だった。
END