短編
□邪魔すんな
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今日はいい感じに暖かい。
俺は特に何かをする訳でもなく、外にあるベンチに座っていた。
その時俺の名前を呼ぶ、可愛らしい声が聞こえた。
『レントー』
振り返ると、ミキが小走りに俺の元へ来るのが見えた。
その手には何か包みを持っている。
レント「ミキ、どうしたんだ?」
『あのね、私お弁当作ったんだ。だからレントに食べて貰おうと思って。』
そう言うと、ミキは持っていた包みを俺に差し出した。
レント「え、いいのか?」
『うん。だって他の皆どっか行ってるし、レントしかいないんだもん。』
…なるほどな。
要は誰でも良かったってことか(泣)
ま、まぁ理由はどうであれミキの手料理が食べられるんだ。
理由は『レントのために作ったの』っていうのに変更しとこう←
『隣、座っていい?』
レント「あぁ。俺腹減ってたし、丁度良かったぜ。」
ミキが隣に座り、お弁当箱を膝の上に置いた。
フタを開けると、
レント「うおぉ!すげぇ!」
ご馳走がぎっしり。
しかも"ミキの手作り"という素晴らしい特典付きだ。
『えへへ。実は自信作なんだ。じゃあはい、あーん。』
レント「…はっ!?いや、あーんて!」
しかし本人は何のことか分からず、キョトンとしたままおかずを差し出している。
『どうしたの?食べないの?』
レント「い、いやそれくらい自分で食べ…」
食べられる、と言いかけて俺はその言葉を飲み込んだ。
なぜなら、俺の視線の先。
そこには外出していたアレフとローレがいたのだ。
しかも物凄い形相で木の陰から俺を睨んでる。
これは見せ付けるチャンス。
それにミキの手作り弁当あーんなんて、夢か妄想内でない限り、絶対に有り得ない。
俺はそう思い、差し出されたおかずをパクッと食べた。
遠くからあーっ!!という叫び声が聞こえる。
ふっ…。見たか、俺のリア充ぶりを。
『美味し?』
レント「おー。めっちゃ美味い!何、お前天才?」
『ふふ。良かった。私もちょっと食べてみよ。』
パクッ。
もぐもぐ。
…ん?
コイツ今何した?
『…うん。割と上手く出来てる。』
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アレフ「い、い、今…」
ローレ「レ、レントが使った箸…」
アレフ「ミキが使った…」
ローレ「こここれってつまり…」
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レント(か、間接キス…!!?)
レント「ちょ、おま、その箸…」
『ん?あぁこのお箸?可愛いでしょ。これ、ロクサーヌさんっていう人から買ったんだ。』
違ぇよ!!!
ていうか今日何なんだ!?
運良すぎだろ俺!!
はっ…!まさか!
今朝たまってたラックの種を3個も食べたのが原因か!?
それで運が上がったのか!?
『レント、さっきから黙ってどうしたの?』
レント「いや、何でもな…くない!」
『え?』
今度はミキの口元。
思いっ切りご飯粒ついてんだけど!
可愛すぎるだろ。
レント「…ったく。しょーがねーな。ここ、ついてるぜ。」
俺はミキの口元についていたご飯粒を手で取ってやった。
『あ、ありがとう…』
そう言って、ほんのりと頬を染めるミキ。
やべぇ…。
可愛い…。←
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アレフ「…もう我慢できない。」
ローレ「御先祖だからって何でもありだと思うなよ…。」
アレフ「ローレ、行くぞ!」
ローレ「あぁ。」
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レント「あー美味かった。」
『良かった、全部食べてくれて。』
そう言いながら、ミキがお弁当箱を片付ける。
その時、ふと向こうの木を見た。
あれ?あいつらがいない…?
そう思った直後、背後から声が聞こえた。
ローレ「(ヒソヒソ)お前がラリホーで眠らせて、俺があいつに攻撃する。いいな?」
アレフ「(ヒソヒソ)OK!じゃあさっそく…」
いや、バレバレだから。
バカかあいつら。
アレフ「僕らの命と引き換えにその立場を奪う!」
ローレ「覚悟しろ!バカ先祖!」
レント「ミキ、あんなところにゲレゲレが!!」
『えっ!?どこどこ?』
俺はミキがあっちを向いたのを確認して、今まさに飛び掛かろうとしている二人に
レント「バシルーラ!」
「「うわあぁぁあぁあぁ……」」
はっ。
バーカバーカ。
どこへでもぶっ飛んどけ!
そして二度と帰って来んな。
『レントー?ゲレゲレいないよ?』
レント「わ、悪い。俺の見間違いかも。」
『さっき何かアレフとローレの声が聞こえた気がしたんだけど…』
レント「ないない。風か鳥か虫か気のせいだろ。」
『例挙げすぎだよ(汗)まぁいっか。』
まったく…。
あいつら邪魔すんな。
というか、この幸せな時間を邪魔させてたまるか!
END