恋愛上等!イケメン学園[片思い編]

□素敵な片思い−4月/fall in−
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神蘭寮で、寮長の梅さんやクラスメイトの龍海君、榊君、吾妻君、水瀬君、藤堂君を紹介してもらった。

龍海君と藤堂君以外は、歓迎してくれているみたい。なんとかやっていけそうかな。




「じゃあ、俺は帰るぞ。後は夏男、よろしくな。」


「了解〜。後のことはこの梅さんに任せてちょうだい♪


それじゃあね、由紀。」


「ああ。」


チラリとも振り向かず帰って行く冴島先生に、どうしても言っておきたい事があった。


「さあ、部屋に案内するわ。亜衣ちゃん、私に付いて来て。」


「あ、あの、梅さん!すみません、ちょっとだけ待ってていただけますか!?」


「あら、いいけど、どうしたの?亜衣ちゃん。


あ、ちょっと〜!?」



私は玄関を出て行ってしまった冴島先生を慌てて追いかけた。


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「先生、冴島先生!!」


陽が西に傾き始めた遊歩道を、一人歩いていた先生を呼びとめた。


「アァ!?なんだお前。どうしたんだ!?」


「あの、今日はいろいろとありがとうございました!!」


髪がバサッと跳ね上がるくらい、勢いよくお辞儀をする私に、先生はちょっとびっくりした様子。


「オイオイ、そんなんいらねぇよ。そんな堅いノリじゃ、神蘭でやっていけねえぞ。適当に力抜け。」


「それだけじゃなくて…。」


「あ!?何か話があるのか?」


「は、はい。私、私…。(モジモジ)」


「何だよ、いきなり愛の告白か!?」


先生は例の、からかうような意地悪い顔でニヤニヤと笑っている。


「ち、違います!!」


私は顔をブンブンと横に振った。


「私…、言っておきますが、男好きじゃありません!!」


「ハア!?」


意表を突かれたのか、先生はポカーンとした顔で固まっている。


「その、誤解されたままじゃ嫌だったので。男好きだから男子校に来た訳じゃないです!


両親がアメリカに転勤になって、急遽探してくれたから……。だから、ちょっとしたリサーチ不足です!」


「…そんな事言うためにわざわざ追いかけてきたのか!?」


「そ、そんなことじゃありません!!私にとっては。そんな風に思われ続けたら、すっごく困ります!」


「…クククッ…わかってるよ、そんな事。お前を見ればすぐにわかるって。冗談だ。」


「そ、そうですか。良かった…。冗談かなとは思ったんですけど、目が笑ってなかったので、万が一にも誤解されていたら嫌だなあと思って。」


私は、ホッとして体の力をゆるめた。


―――どうして、こんなに先生に誤解される事が嫌だったんだろう。


「バーカ。誤解なんかするか。目が笑ってないのはいつもの事だ。慣れろ。」


「は、はい!」


「だけどな、お前の方は十分気をつけろよ。


周りの男共は100%女好きだ!


女子が来たとなりゃ、みんな狙ってくる。例えどんなに色気のない女でもだ。」


先生は、じっと私を見据えてそう言った。


「それって…(me?)」


(また何か、毒を吐かれたような気が…。)


「そうだ、お前も例外じゃないって事だ。


これからは、学校でも、寮でも、気を抜くな。


少しでも油断したら飢えた狼が襲ってくると思え!!」


(飢えた狼が……。プッ。まさか…そんな大袈裟な。)


「なんだ、その顔は。俺様の言うことが信じられねえのか?」


軽く吹き出したのがみつかって、また先生に睨まれてしまった。


「い、いいえ!わかりました、これからは、学校でも寮でも気を抜きません!」


私は先生に勢いよく敬礼をした。


「よ〜し、いい子だ。」


(は、初めて優しい言葉を!?)


「ま、何かあったら俺や夏男に相談しろ。」


「はい。」


それっきり先生は何も言わず、じっと私を見つめてきた。


(な、何!?)




夕陽が先生の髪の毛や瞳を明るく照らしている。




怖いくらい整った顔立ちに、体が固まって、視線をそらすことができない。




気まぐれに強く吹いてくる風に、街路樹の葉がざわざわと揺れる音だけが聞こえる。




先生は、自信に満ち溢れた表情で、ゆっくりと口を開いた。




「俺は、最強だ。」




―――夕方の風が、私と先生の間を吹き抜けていく。




「お前の事は、この俺が必ず守ってやる。」




(!!!!!)




「じゃあな。明日サボんなよ。」


そう言って、


先生の影は夕陽の中に小さく消えていった。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


その日は寮で、私の歓迎パーティーが開かれた。


梅さんが腕によりをかけたごちそうをたくさん作ってくれて、寮のみんなとゲームで盛り上がった。


神蘭での長い一日が終わろうとしていた。


部屋に戻るとベッドに倒れこんだ。体が泥のように疲れて、すぐにでも眠ってしまいたかったけど、先生の言葉がよみがえって頭の中をぐるぐると駆け巡った。





『お前の事は、この俺が必ず守ってやる。』




(あんな事、誰にも言われたことがないよ…)


その夜、私は枕を抱きしめながら、眠れない夜を過ごしたのだった。



  
…つづく…

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ここまで読んでくださって

本当にありがとうございました。

*たまこ*

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