恋愛上等!イケメン学園[片思い編]

□素敵な片思い−11月/moteki!?−
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(そうは言っても担任教師。関わらないなんて無理なんだよね。)


化学の授業。


いつものように先生の低い声が甘く響いて心臓を軋ませる。






―――好き、大好き、大好き…………








『 俺も好きだよ… 亜衣… 』







何度も思い出しては、甘く苦い、複雑な気持ちが私を襲う。


(あの台詞が、台本のものじゃなくて、先生の言葉だったらどんなにいいかと思ったけど…)


結局、台本と一字一句違わなかった。


(やっぱり、晃の役をちょっとやってみたかっただけなんだ!!ワナワナ)







『お前の大好きな、煩悩の相手の事でも考えて、言ってみろ』






(まったく… 何言っちゃってるんだか。先生ってもしかして天然!?


……イヤイヤ、魔王に限ってそれはないか。


や、やっぱり、私の気持ち知っててわざと言わせたんじゃ…)





―――何でも好きなもの買ってやるよ、ご褒美だ




―――ばーか、遠慮するんじゃねぇよ






はっ!!!一番嫌な事思い出しちゃった…


あの時の女の子の事、まだ何にもわかってない。


一瞬で、真っ黒い感情に覆われそうになるのを、慌てて振り切る。


いろいろ考えすぎて、最近疲れちゃった…。


いっそ、嫌いになれれば―――


(んん〜…!!)


(んんん〜…!!!)


ボキボキッ!!


「ィッテー!!何すんだよ、亜衣!」


「あ、亮二、ごめんごめん!えへへ。」


力みすぎて、うっかりシャーペンの芯を、亮二の顔に飛ばしてしまった。


私は授業に集中しようと、真っ直ぐに先生に向かった。


(んん〜…!!)


(んんん〜…!!!)


ダメだ!無駄にかっこいいから、気が散ってしまう。


(神様が与えた世界一無駄な美貌だわ。


本当に、野獣の姿だったら良かったのに。)


「コラ、山崎!!


俺様に向かって何メンチ切ってるんだ!!」


(ハッ!!)


(知らず知らずのうちに魔王を睨みつけていたみたい……)


「いっ、いいえ!!まっ睫毛が目に刺さっちゃって…すみません!」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


三日月―――


11月の夜空は空気が澄んで、月や星の光が切なく瞬いている。


「亜衣ちゃん、最近ぼんやりしてどうしたの?悩み事なら俺に相談してよ。」


夕食の後、寮の庭で月を見ていると、いつものようににこやかに晃が話しかけてきた。


「晃…。月がきれいだなって思って。」


「わ、本当だ!だけど、俺にとっては亜衣ちゃんの横顔の方がもっとキレイだよ。」


「まっ、また晃はそんな事ばっかり…!!言い慣れすぎてて怖いよ。」


「本当だってー!もう、亜衣ちゃん最近俺に厳しくない!?」


「だってぇ…。」


「そういえばさ、この前の映画で本当はキスシーンがあったって知ってた?」


「キ、キスシーン!?」


「そう。脚本の田島がキスシーンを書き上げた所に由紀ちゃんがやってきて、激怒して書き直させたらしいよ。」


「先生が……?」


晃はこくりと頷いて続けた。


「俺、亜衣ちゃんとキスシーン、やりたかったなあー。


由紀ちゃんって、亜衣ちゃんには激甘なんだから。」


「そ、そんな事ないよ。いつもひどい事言われてるんだから!!…そろそろ冷えてきたから部屋に戻ろうか。」


胸の動揺を隠すように、私は庭を後にした。

 
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