恋愛上等!イケメン学園[片思い編]
□素敵な片思い−8月/dive!−
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どこをどう走ったのか。
とにかくあの場所から逃げたくて。
気付いたら、見知らぬ住宅街に来ていた。
辺りはすっかり暗くなっていた。
私は見つけた小さな公園に入ると、ブランコに座った。
キィ…
錆びた鎖の音が響く。
先生…。
『何でも好きなもの買ってやるよ、ご褒美だ』
『ばーか、遠慮するんじゃねぇよ。』
思い出すと、心臓が痛い。ズキズキと鋭い刃でえぐられているようだ。
(あんな優しい顔…)
(笑い合ったり…)
(大切にしてるの?あの子の事…)
だめだ、考えれば考えるほど苦しい。
そういえば、学校では女子は私だけだから、先生が他の女の子と話している姿、見たことないんだった…。
免疫ゼロだったから、余計にキツいや…
心のどこかで、私だけ少しは特別な存在だと思っていたのかな。
女子と男子に対する態度が違うのは当たり前なのに… 思い上がって、馬鹿みたい。
調子に乗ってパンを焼いていったりして…
先生にはちゃんと温かい手料理を作ってくれる人がいるかもしれないのに。
気分が沈む。
そろそろ寮に帰らなきゃ、梅さんを心配させちゃう。
頭ではわかっているけど体が動かない。
みんなに心配かけたくない。でも、今は普段の私でいられない。話をするのも、笑顔で過ごすのも辛い。
キィキィとブランコを漕いでいると、子供の頃を思い出した。
(そういえば、昔から落ち込んだときは誰もいない公園に来て、こうやってブランコを漕いでたっけ。)
落ち込んでいる所を誰にも見られないのが良かった。子供の頃から、痛みは自分1人で癒やすタイプだったから。
「そうだ!」
私はすっくと立ち上がった。