世界一初恋

□陽炎〜夢の終わり〜
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8月15日
病気になりそうな程の日差しの中、俺はブラブラと外を歩いていた
時間は12時半くらいで天気は快晴だ
蝉の鳴き声を鬱陶しく思いながら宛もなく歩く
昨日、小野寺を抱こうとしたら拒絶された
まぁ付き合ってもいないんだし当然と云えば当然か…
でも小野寺は本気で俺を嫌っているのだろうか?
そんな事を考えていると、何故か公園に来ていた
ベンチに座ると猫が足に擦りよって来る
しばらくの間、無言で猫を撫でていると…

「可愛いですね」

「…小野寺」

小野寺は俺の隣に座り、猫を怖がりながらも撫でる
俺はただそれを見ているだけだ

「高野さん…昨日のこと、怒ってますか?」

「いや。ただ、ショックだっただけ」

「別に高野さんに抱かれるのが嫌だったワケじゃないんです。…こんな中途半端な関係が嫌だったんですよ」

「…………」

「……俺、夏は嫌いです」

「あぁ」

猫を撫でながら小野寺はふてぶてしく呟いた
相変わらず蝉は耳障りなほど鳴いている
しばらく猫を撫でながら二人で駄弁っていると、猫が急に道路の方へと走り出した

「待って!!」

それを追いかける小野寺
…なんとなく、嫌な予感がした

「小野寺、危ないぞ」

そう云ったのに…
飛び込んでしまったのは




赤に変わった信号機




バッと通ったトラックが、小野寺を引き摺った




俺は呆然とその光景を見ていた




血飛沫の色と小野寺の香りが混じり合ってむせ返った




嘘みたいな陽炎が「嘘じゃないぞ」って笑ってる




夏の水色、かき回すような蝉の音に全て眩んだ…




そのまま俺は意識を失った




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