僕らの生きる道

□大切の形
1ページ/1ページ




「そんなことだろうと思った」

凛と響いたその声の主

それは、華祥院柚香だった

「柚香、どうしてお前がここに?」

「相変わらず老けてるね、文次郎」

「…質問に答えろ」

「ボスの親友に向かって、その口の聞き方はなに?」

相変わらずの口調で話す柚香は、普段と何一つ変わらない様子だ

親友がいなくなってしまったというのに

「柚香、お前は何を知っているんだ?」

そう私が問うと、柚香は肩を竦めながら言った

「電話があったの、瑠依から。兄のとこに行くのにみんなが心配するだろうから、事情説明よろしくって」

「よろしくって、何を?」

「引き止めておいてってことでしょ。1対1で戦いたいって言ってたから」

「で、柚香は何て答えたの?」

「行ってらっしゃい、って。あの子、言い出したら聞かないから」

私達とは違う、瑠依との接し方だ

私達の場合は、目の届く範囲に閉じ込めて置きたい

柚香の場合は、瑠依の意思に任せて放任する

この差というか、違いは何なのか

「あんた達は心配し過ぎ。あれで瑠依も1つのマフィアを統べるボスなんだし、もっと信じてあげなよ」

やはり、そこなのか

信じている気ではいたが、信じきれていなかった

こんな状況ですら絶対的信頼を寄せる柚香は凄いのかもな

「場所くらいは、教えてあげる」

柚香が瑠依の兄の屋敷の場所を言い、私は念のため書き残す

「じゃ、あたしその辺散歩してくるから」

そう言って部屋を出て行った柚香

これは、こちらの行動を黙認してくれると言う風に解釈してもいいということだな?

ならばこちらは好きにさせてもらおうとするか










.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ