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□それが運命なら慶んで身を捧げよう
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それが運命なら慶んで身を捧げよう
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時は戦国。森の中では忍達の静かな熱戦が繰り広げられていた。
「…くっ。」
_キンッ! などと音を九無が音を立てる。
「もういい加減諦めろよ、この三流糞忍者。」
「そりゃ、お前もだろ?」
そう言葉に出さなくとも目で会話する。両者お互いに互角だった。
文次郎は思っていた。「どこかで闘ったような…。」そう感じた。
相手側も同じようだ。不思議に思ったものの気を抜くなんて事は許されない。
そして戦い続けて幾時間が過ぎた。
そして文次郎はやっと相手の喉元をつかんだ。そのまま九無で喉元を掻っ切ろうとした。
気づいてしまった。文次郎は気づいてしまったのだ。
相手が誰であるかを。
自分がこの世でこの非常な世界で最も愛した人間だった事に気づいた。
「とめ…さぶろう。」
「早く。殺せよ。そして俺の首を持っていけ、文次郎。」
そんなことはできないと言いたかった。でも自分は忍である以上その選択をする事は許されない。
俺は目の前に居る男の首を掻っ切った。
涙が止め処なくあふれ出てきた。止まらない。
止めようとしても止まらなく。
出るのは嗚咽と涙だけだった。
____俺達はこうなる運命だったのですか?神様。そうだ、貴方に聞いているんだ。俺達は。

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(神様は俺達に与えなかった。「幸せ」を。それだけを与えなかった)

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