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□転生輪廻
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転生輪廻
一人の少年は学園で一番無口といわれる男に恋をした。
男は少年の心を傷つけないように、その想いを拒絶した。

少年はそれに気づいていた。でも諦めることができず好意を伝え続けた。

********************
季節は春。
桜が舞い散っていてとても綺麗だった。
同じクラスである左門はあっちだ!こっちだ!だの言いながら走り回っている。
いつものことだから驚くこともでもない。
そんなことは今はどうでもいい。
そうだ。そういう時はいつもの場所に行こうか。

俺は図書室に向かっている。
何でかって?それは、俺の想い人がそこにいるからだ。
中在家長次先輩。図書委員長だ。「忍術学園一無口な男」と呼ばれている。
笑顔が不気味とかで怖がられることもあるけれど。俺はそうは思わない。
ただ、笑うことに慣れてないだけなんだよ、な。きっと。

朝から晩まで先輩のことばかり考えてる。
俺はたぶん...いや。絶対に先輩に恋をしているんだろうなあ。
ああ。そんなこと考えている間に図書室の前についてしまった。

ドアを開けようとする俺の手が震えている。緊張しているのかな。胸がドキドキしている。
でもあけなければ会えない。でも万が一の話だが、あけたとしてもそこにいるのは先輩か?
もしかしたらきり丸かもしれないし。久作かもしれない。いや、怪士丸か?それとも不破先輩?
と、とにかく開けてみなければわからないんだからさ。あけてみよう。

「中在家先輩、いますか?」
俺はドアを開けた。
そこにいたのは中在家先輩だった。でもかすかに笑っている。
やっぱり、大声だったのまずかった、かなあ。
「...次屋。図書室では静かにしろ......。」
「は、はい...。」
額から汗が出てきた。中在家先輩はそういうと持っていた本に視線を落とした。
何の本を読んでいるんだろう。ああ、気になる。今度聞いてみよう。
「......所で、次屋。私に何か用事があるのか?」
「あ、その。新しく入った本のことを...。」
「......そうか。それにしても次屋よくここまで来れたな。」
先輩が何を言っているのか俺には理解できなかった。
この学園に三年間も通っていてなんで道がわからないと思うのかがわからない。
「そ、それってどういう意味ですか?」
「お前は方向音痴だからな...。」
先輩、そんな冗談を言うなんて。俺は方向音痴じゃないですよ。
よく作兵衛や藤内に言われるけど、そんなことはない。
方向音痴なら左門だろう。そういいたいのを我慢した。
先輩はかすかに微笑んだ。その後、鐘がなってしまった。

俺は自分の部屋を眺めた。普通の広さのはずなのにとてつもなく広く見えた。
四月になってからの自分は可笑しい。

好きだというのは自覚していた。でも。でも...その好きというのがただの憧れではない方向に進んでいる。
歪んでる? それとも...狂ってる? そんなことはわからないさ。
ただ先輩が好きで好きでしょうがなくなっているのは事実。
「先輩。先輩、先輩、先輩、先輩...先輩!」

狂ったように俺は「先輩」という言葉を続けた。
それは偶然来た、クラスメイトの声でさえぎられた。

「おい、三之助。一人でぶつぶつ、何言っているんだ?」
左門...か。そこには同じクラスの神埼左門がいた。
俺は「別に、」といったでもその一言が気に食わないのか左門は難しげな顔をした。
それ以上追求する気にならなかったのか、その場をすぐに去っていってしまった。

あの日から、しばらくが経った。
望んでもいない日が来ようとしていた。卒業式だ。ああ。中在家先輩が卒業してしまう。
俺は、その前の晩からだろうか。泣いてばかりで、目が赤くなっていた。


そうしている間に、式が終わったのか、六年生が忍術学園の扉を出ようとしていた。
俺は必死で中在家先輩を探した。
六のい...六のろ...あ。居た。やっと見つけた。俺は中在家先輩の元に走った。
俺は中在家先輩の足にしがみついた。少し迷惑そうな表情をしていたが。俺は離れなかった。
「......三之助。離れてくれないか?」
「嫌です。」
「...どうしてもか?」
「はい。」
俺は頑なに離れることを拒んだ。でも迷惑なのはわかっていたし。
いつまでも引き止めてしまうわけにも行かない。
わかってる、わかっているはずなのに。何でだろうなあ。
「...三之助。」
「...先輩。俺の話を聞いてください。終わったら離れますから...」
俺はそういった。先輩はわかってくれたのか静かにうなずいた。

「俺は。先輩のことが...先輩のことが好きです。でも、先輩は俺のことを後輩としか見てないですよね。
 ...俺。先輩が好きだから、だから...離れたくなかった。話したくなかったんです。
 でもいつまでも引き止めるわけにもいかない。 だから、待っていてください。
 俺がこの学園を卒業するまで。 そしたら貴方の元に行きます。絶対に。そして、貴方を。
 貴方を.........にしますから!」

俺は最後の言葉がどうしても出なかった。恥ずかしくって、なのだろうか。
いい終わり、俺は先輩から離れた。 先輩は少々頬を赤らませ、出て行った。

あの日から三年が経った。
三年前までは三年生だった俺達も今じゃ六年生だ。
何でだろうか。六年生と言う学年は気に入らない。あの人の事を思い出してしまうからだ。
思い出したくない訳でもないし勿論この三年の間一度たりとも忘れた事はないし想いは変わらない。
そんなの...当たり前だろ? あの時あの人を俺の妻にするって決めたんだから。

まあ、一旦それは置いておこう。今日は始業式なのだが何でも新しい先生が来るとか来ないとか。
風のうわさみたいなもんだし。信じる方がバカなんだろうな。
俺はいつものように机に肘をつけてドアを見た。そしたら見覚えのある顔...いやあの人がそこに居た。

「お、おい。なあなあ。三之助、あれ、中在家先輩じゃないのか?」
「......たぶ...ん。」
嘘ならそう言ってくれ。 夢なら夢で構わない。ただ、目覚めてほしくない。
あ、いや、でも頬を抓ってみたけどやっぱり痛い。て...ことは現実?
嘘だろ。おいおい...。

「......次屋。煩いから少し黙れ。」
「はーい。」
静かな部屋の中で俺と先輩の声だけが響き渡った。
先生に注意されるのはいつもの事なのにな。何でこんなにも胸がときめくんだろうか。
中在家先輩だから、だろうな。
いやいや。そんなことを今は考えてる場合ではない。今は先輩の話に集中しなきゃならない。

*******
しばらくして先輩の話が終わった。長かったなあ...と思いながら、俺は肩の力を抜いた。
隣に居た左門と作は俺の顔を見てはニヤニヤと笑っていた。
「な、なんだよ。作。左門」
俺がそういうと作は俺に「よかったな」と言った。左門は左門で「頑張れよ」と言って来た。
何でこいつらにバレてるんだ?

わけがわかんないまま俺は席を離れて先に部屋に戻った。
そこに寝っころがって、何を話せばいいのか考えてたら。ガラリと部屋の襖が開いた。

俺は起き上がって後ろを振り向いた。そこには中在家先輩が居た。
苦笑いで俺は先輩に声をかけた。

「な。なんスか...?」
「......次屋。聞きたい事があってな」
「はあ。聞きたい事ってなんですか?」

先輩は俺の横に座って。俺の顔をマジマジと見た。
思わずその表情にドキッとしてしまった。もそもそと先輩は口を動かした。
「......三年前。お前が私に言った言葉、覚えてるいるか?」
三年前。三年前と言えば俺が中在家先輩に...告白(?)したな...。あの時の言葉なら覚えてる。
忘れるわけがないよな。今の俺であればもっとマシな告白ができただろうに。
「......次屋?」
「あっ!す、すみません。」
「...誤るな。それはともかく覚えてるのか覚えてないのか?はっきりしろ。」
先輩は俺の顔を真剣な目でみつめた。思わずドキッとしてしまったが。今は答えなければ。
「勿論。覚えてますよ。忘れてませんから、大丈夫です。」
「...そうか。」
そう言って先輩は少しだけ微笑んだ。立ち上がって先輩...いや。先生は俺の部屋を去った。

しばらくして作兵衛が来て「お前。顔赤いぜ?熱でもあるんじゃ」と言っていたらしい心配されたけど。
俺には聞こえなかった。

なんでだろ俺は中在家先輩のあの顔がどうしても離れない。
三年前の告白(?)した時の真っ赤な顔。
それだけじゃない。さっきの微笑んだ顔...どうしても離れねぇよ。
可愛い。ってか、その前に先輩...あの笑い方直ったのかな。


「おい、三之助。三之助!」
「......はぁ。」
「なあ、作兵衛。三之助どうかしたのか?」
「知らねぇよ。」

「...中在家...先輩。」
先輩が好きでしょうがなくて。俺の頭の中には先輩しかいねぇ。
無理やり襲いたい。きっとあの服の下は鍛え抜かれた体が見えるんだろうなあ...。
快楽に襲われて、涙ぐむ顔。真っ赤な顔。濡れた髪。想像しただけで興奮...してしまう。

俺は無言で立って、中在家先輩の部屋に行く事にした。
「ちょっ...三之助!お前、どこに行くつもりだ!?」
「ちょっと、中在家先輩の部屋行って先輩襲ってくる。」
「は?ふざけてんのか、三之助?」
「ふざけてねぇよ。」
俺は腕を掴む、作兵衛の手を無理やり離した。

そんな俺の後姿を二人は見ていた。
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