2

□いつもと変わらぬ笑顔
1ページ/1ページ

いつも、変わらぬ笑顔 

「またやってしまった...。」
呟きながら破裂させてしまったなどと言いながら破裂したバレーボールの
破片を片付けている。

「よう、零。お前、またやったのか?」
「ん、ああ。妖君か。豪君が力一杯打つもんだから、なあ。」
どうやったら粉々になるんだかわかんねえけどな。
零のすぐ足元にバレーボールの破片があった。
それをすぐに拾い上げて渡そうとしたら急に風が強く吹いてその破片は
俺の手から抜け出して飛んでいっちまった。

「......強い風だったな。」
「ああ、そうだな。そのおかげで破片が全部飛んでいってしまったのだ。」
「俺もだ。」
「え、妖君も拾っていたのか?」
驚いた顔で俺を見上げる。相槌を打った。
いつになく奴は笑っていた。何故だろうな、思わず胸が高鳴った。
俺の胸も脳も可笑しくなっちまったっつーことだな。
「妖君。今日はみんな帰っちゃったし。途中まで、どうかね?」
「ん、そりゃあ、どういう意味だ?」
「い、いや...帰らないかと、ね。」
コイツの顔がどんどん赤くなる。よくわかんえ奴だな。
ぼそぼそと「嫌なら別に...いいんだが」とかほざいてる。
誰も嫌とは言ってないんだから、もう少し落ち着けばいいものを。
「別に、構わないぜ?」
「ほ、本当か?!」
嬉しそうに笑っている。いつも笑ってるがこんなに笑ってるのは久々だな。
零は「よ、用意してくるから待ってろ!」と一言だけ言って一旦教室に行った。

●▲■
「それにしても妖君が放課後まで居るなんて。今日はどこの人と喧嘩したんだい?」
「ん、いや。すぐそこのとな。みんな弱っちくてあっさり、終わったけどな。」
零の奴は「そうなのか」と適当に相槌を打ってみせた。
どことなく愛らしく思えてくる笑顔。髪の毛。すべてが愛おしく思えてくる、か。
どうやら俺は熱か何かで浮かされているようだ。

少しだけ手を伸ばせば近づくのになあ。なんて考えてみる。
思ったままに手を伸ばして零の握ってみる。
そしたら零は握り返した。でもその手はどことなく熱いような気がした。
やけに零が静かだから横を見てみると少し俯いて真っ赤な顔をして歩いている。
それにつられて俺も恥ずかしくなる。心臓の心拍数がどんどん早くなって自分の体の
体温がどんどん上がって行くようにも思えた。

「よ、妖君...?」
「ん、どうした...?」
零は俯いたまま、口を開いた。どことなくぎこちない会話。
「や、やっぱりなんでもないのだ。」
そういって「にゃははは」と笑ってみせた。

「やっぱ、アレだな。零。なんつーか...うまく表現はできねえけど...」
言いかけた瞬間零が俺の口を塞いだ。
「そ、それ以上は言っては駄目なのだ、妖君!」
「何でだ?」
「そ、そんなことはど、どうでもいいだろ、な、な!妖君」
笑って誤魔化す気かもしれねぇけど。そんなの許さねぇよ。
「じゃあ、お前が言ってはいけない理由を話すまで、離さねぇよ。」
二頭身で逃げようとする、零を思わずだったが。抱きとめた。
必死で逃げようとするが。お前の力じゃ俺には適わねぇのもわかってるだろ?
無謀っつーことだ。
「わ、わわ、わかった。わかったから、離してくれ...!」
「おう。でも、手は離さないからな?」
奴は頷いた。二頭身でやられると子供を説得してるみたいで焦るな。

「い、いや。ただ、もしかしたら。その先を言ってしまったら戻れなくなってしまうような気がして。」
「......じゃあ、戻れなくていいんじゃないのか?」

コイツの驚いた表情。いい加減なれてきたな。
表情が本当に豊かな奴だ。変わってるというか、変態というか。
不思議と愛おしく感じるこの感情の意味がわかったような気もするんだ。
ただ、俺は非常に独占欲が強いようだ。独占したくなるこの気持ちはどうすりゃいいんだか。

「妖君。で、でもそれは流石にまずいんじゃないのか...?」
「まずくはないさ。戻れれないほどに。どこまでも堕ちて行けばいいだろ。」
「うう...。しかし...「いいから。俺のモンになりゃいいだろ。零。」

真っ赤になって子供のように落ち着きなくほかの場所を見てる。
「おいこら。こっち見ろよ。」
顔をむりくりこっちに向けさせた。奴は、一言だけ呟くと頷いた。

後日の話。奇面組の他のメンバーにこの件がバレて。かなりからかわれた。

[堕ちるとこまで堕ちようじゃねぇか]

END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ