BOOK
□No.12
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室内に前のめり気味で飛び込んで来たのは、いつまでも戻って来なかったシャチだった。
だが俺は、お前今まで何やってた。という疑問は口から出す事無く…ソレを一度、喉の奥へと飲み込んだ。
…女、か?
シャチが丁寧にその腕で抱えている人間へと目をやる。
顔面蒼白に僅かに痙攣する手足…なんだコイツ、血が殆どねぇな。このままだと永くは無いか…
死にかけの女から再びシャチへと視線を戻せば、奴は、船長ッ!!とすがる様な目を向けてきやがった。だから何なんだコイツは…
ふとシャチの手元に目をやると、そこには必死に女を抱きかかえるその影で、図鑑に載っていたあの果実と同じ物がしっかりと握られていた。
成る程。結局BBを見つけられたのはコイツだけだったって訳か…
俺は大きくため息を一つ溢し、焦燥に駆られるコイツと2〜3言葉を交わして女を治療室へと運ばせた。
そんなに助けてぇなら俺に黙ってBBを食わせてやれば良かったものを。全く…従順と言うか、馬鹿と言うか。
まぁ、今回はBBに免じて助けてやろう。そうため息を溢し俺は治療の準備へと取り掛かった。
ったく、面倒事拾って来るのは本当にシャチの専売特許だな…面倒くせぇ。
“ガチャン、ガチャガチャ”
半ば投げやり、適当に準備を進める俺だったが…
「ッ?!」
治療室に運ばれた女の顔をここで初めてちゃんと確認し、俺は言葉を詰まらせた。
先程まで関心の元だった女が、目の前で死にかけている。
フフッ…全くあの野郎、えれぇもん拾ってきたもんだ。
シャチの拾いもんのお陰で、奴が戻ってきた後もまだ出航は先延ばしにしていたが…俺は直ぐさまペンギンを呼びつけ、今すぐ出航しろ。とだけ告げ治療室の扉を閉めた。
「さて…」
面白くなりそうだ。
好奇心
(とりあえずは輸血からだな…それからゆっくり解明するとするか。なぁ首刈り屋)
(シャチ、出航するぞ。お前も手伝え)
(え、でもまだアイツが…)
(船長命令だ。船長にバラされたくなきゃ早く手伝え)
(えッ…アイツ、連れてくの?)