BOOK

□No.14
2ページ/2ページ



女が寝ているベッドを囲む程度の控えめなサークルを作り…


“チャキッ…”


俺は静かに刀を抜いた。


狭い部屋で振り回すには長すぎる自身の得物に、今ばかりは悪態をつき、一呼吸置く。


「………」


流石に、下手をすれば自分自身の首を絞めかねない事をしようとしているんだ…


“ドク、ドク、ドク…”



普段は味あわう事のない緊張が全身を走る。


“ドク、ドク、ドク…ドク”


そして俺は覚悟を決め、ズバンッ!!と刀を振り落とした。


狙いは右手。


「………」


確かな手応えを感じ、ゆっくりと自分の右手を確認する。


「………フフッ…」


そして目に飛び込んだ自身の姿に、俺はニヤリと歪み上がるこの口角を抑えられなかった。


俺の右手は…此処にある。


“ギュッ…ギュッ”


先程と変わらず手首と繋がり、なに不自由無く、普段通り動かせる。


そして女の右手へと視線を落とせば、そこには狭いサークル内をフワフワと浮遊する…アイツの手があった。


ハッ…クロスロード・ミラー。どうやらお前のその能力…俺とは相性が最悪らしいな。


俺にとっては最高と言ったところか…フフッ、面白え。


だがコイツの左腕の傷はどうやって付いた…あのヒョロ大佐とか言う奴の仕業か?


「ギャクギャクの実、か…」


だとしたら海軍の野郎はどうやって…まぁ良い、それは本人から聞くとしよう。


“チャキン”


予想を上回る結果に俺は刀を仕舞い、女の身体を元に戻し、上機嫌で最後の実験へと取りかかった。


残すは薬剤によるものだ。


「フフッ」


どの薬品を使うか迷ったが、無難に弛緩剤をこの手に取る。


そして部分的に作用する様調合し、女の体内へと投与してから5分後…


「…………」


“ツカツカツカツカ”


俺は無言で廊下を歩いていた。



好奇心の副作用



(さっき廊下で船長とすれ違ったんだが…)

(…お前も見たか?)

(あぁ…お前も?)

(((不機嫌オーラMAXだったな)))

(触らぬ神に祟り無しだよな…)


(クソッ……右手が使い物にならねぇ)
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ