BOOK
□No.19
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『いや…私海に出てから、まぁ連れが居た時期もあったけど…基本ずっと一人で旅してきてさ』
伏し目がちに言葉を続ける私の話に、皆黙って耳を傾けてくれている。
『だから、仲間ってどんな物か知らないんだ、私。そこまで誰かを信じてるって…すごい事だよね!!』
興奮醒め止まぬまま、私は声を大にして言葉を続けた。
『良いねッ…そーゆーの!!私この海賊団の雰囲気、好きだよ!!』
(どもー)
(適当に座りな〜)
(スープ、飲んで良いッスよ)
私の事全然知らないのに、一応一言ずつ言葉をくれたクルー達も…
(キャプテン大丈夫かな〜)
寝不足の船長さんを気にかけてたベポも…
(グフフフッ)
たった一言であんなに喜んでいたキャスケット君も…
(船長がそう言うんだ)
絶対的な信頼を置いてるペンギン帽も…
皆船長さんが好きで、心から信じてる。
そして…
(あまり舐めるな)
船長さんも、クルーの事を信じてる。
16歳で海に出て、17歳で一人旅を始めてからのこの6年間…色んな海賊を見てきた。
部下を盾にして逃げる船長。仲間を裏切り敵に寝返る奴。疑心暗鬼から仲間同士で傷つけ合う、酷く醜い一団もあったっけ…
私が刈ってきた奴等は、そんな糞の集まりが多かった。
でも…この海賊団はそうじゃない。
まだこの人達のこと、全然知らないけど…確信がある。何か違うと。
海賊なんて所詮無法者の集まりだと思ってた。けど、ここは暖かいなぁ…なんてつい綻んだ顔。
「…ぶっ……はははッ!!成る程なッ」
すると急に声を上げ笑い出したペンギン帽。
『?』
そんなペンギン帽に目を丸くしていると奴は、いや悪い。と更に言葉を続けた。
「船長はあぁ言ったが…俺はやっぱり、自分自身で確認しないと気が済まないタチでね。俺なりにお前を試したくて、多少威嚇させてもらった」
そう説明するペンギン帽の肩は未だ静かに揺れている。
「すまなかったな。確かにお前に害は無さそうだ…改めて、俺はペンギン。よろしくな」
そう言って手を差し出してきたこの男…ペンギンさんからはもう、先程までの威圧感は全く無く、寧ろとても優しいオーラを放ってた。
疑心が隠せずその穏やかな目を覗きこめば、ニコッと笑みを浮かたペンギンさんが、ソッと私に握手を促す。
「ふふ、安心しろ。もう何もしない」
優しく下がる目元はきっと…この人の本物の笑顔。多分これが素のペンギンさんが放つオーラ。
うん…ちょっとさっきの船長属性っての、取り消しで!!