BOOK

□No.19
2ページ/3ページ



『いや…私海に出てから、まぁ連れが居た時期もあったけど…基本ずっと一人で旅してきてさ』


伏し目がちに言葉を続ける私の話に、皆黙って耳を傾けてくれている。


『だから、仲間ってどんな物か知らないんだ、私。そこまで誰かを信じてるって…すごい事だよね!!』


興奮醒め止まぬまま、私は声を大にして言葉を続けた。


『良いねッ…そーゆーの!!私この海賊団の雰囲気、好きだよ!!』


(どもー)


(適当に座りな〜)


(スープ、飲んで良いッスよ)


私の事全然知らないのに、一応一言ずつ言葉をくれたクルー達も…


(キャプテン大丈夫かな〜)


寝不足の船長さんを気にかけてたベポも…


(グフフフッ)


たった一言であんなに喜んでいたキャスケット君も…


(船長がそう言うんだ)


絶対的な信頼を置いてるペンギン帽も…


皆船長さんが好きで、心から信じてる。


そして…


(あまり舐めるな)


船長さんも、クルーの事を信じてる。


16歳で海に出て、17歳で一人旅を始めてからのこの6年間…色んな海賊を見てきた。


部下を盾にして逃げる船長。仲間を裏切り敵に寝返る奴。疑心暗鬼から仲間同士で傷つけ合う、酷く醜い一団もあったっけ…


私が刈ってきた奴等は、そんな糞の集まりが多かった。


でも…この海賊団はそうじゃない。


まだこの人達のこと、全然知らないけど…確信がある。何か違うと。


海賊なんて所詮無法者の集まりだと思ってた。けど、ここは暖かいなぁ…なんてつい綻んだ顔。


「…ぶっ……はははッ!!成る程なッ」


すると急に声を上げ笑い出したペンギン帽。


『?』


そんなペンギン帽に目を丸くしていると奴は、いや悪い。と更に言葉を続けた。


「船長はあぁ言ったが…俺はやっぱり、自分自身で確認しないと気が済まないタチでね。俺なりにお前を試したくて、多少威嚇させてもらった」


そう説明するペンギン帽の肩は未だ静かに揺れている。


「すまなかったな。確かにお前に害は無さそうだ…改めて、俺はペンギン。よろしくな」


そう言って手を差し出してきたこの男…ペンギンさんからはもう、先程までの威圧感は全く無く、寧ろとても優しいオーラを放ってた。


疑心が隠せずその穏やかな目を覗きこめば、ニコッと笑みを浮かたペンギンさんが、ソッと私に握手を促す。


「ふふ、安心しろ。もう何もしない」


優しく下がる目元はきっと…この人の本物の笑顔。多分これが素のペンギンさんが放つオーラ。


うん…ちょっとさっきの船長属性っての、取り消しで!!
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ