BOOK
□No.20
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「あんたが俺に自分の部屋で隠し持ってる秘蔵酒を持って来るのは、大抵何か企みがあるか…又は納得させたい事がある時ぐらいだからな」
そりゃ嫌でも警戒もするさ。
「フッ…そうだったか?」
しらばっくれやがって…ったくこの人は。
「はぁ…」
…以前、夏島で入手した地酒を持って来た時は、海軍基地に潜入させられた。
その前は換金所で、上手く交渉しろ。そう言い相手の言い値を倍まで上げさせた。勿論、そこまでの価値がある代物では無かったがな。
一言、やれ。と言われれば勿論断るつもりは無い。
船長も意見を変える気なんざ無いんだろうが…まぁ、ちゃんと俺等の事を気にかけてくれる。
そんな所もクルーから惹かれる所以でもあるのだが…今回ばかりは俺も素直にコイツを受け取れない。
今俺に何か“納得させたい事”があるとすれば、ソレは一つしか思い当たら無いからだ。
「…あの女の容態は?」
「フフッ…明日には目が覚めるだろうよ」
「そうですか」
「あぁ」
「………」
途切れる会話。待てども待てども船長からの言葉は無い。
「今回は…次の島まで結構時間がありますね」
「あぁ、そうだな。1ヶ月もかかるらしいじゃねーか」
「そうですね」
「………」
又しても途切れた会話の合間には、船長が手元の酒を旨そうに流し飲む音だけが小さく響く。
「…船長」
「フッ、なんだよ」
はぁ…なんだよじゃねぇだろ。
「……今回ばかりは、俺は反対ですよ」
なかなか話の核心に触れてこない船長に痺れを切らし、俺から先に答えを告げた。