BOOK
□No.20
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「今までチマチマ賞金額を上げてきてた奴が、ここに来て一気に7千4百万…この跳ね上がり方は普通じゃない。ましてやあの俊足の殺し屋“首刈り”だ」
警戒するに越したことは無い。そう断言する俺に船長は静かに落ち着いた声を寄越した。
「その心配なら要らねぇよ。今のアイツにこの船を陥れる力も、その気も無ぇ」
「…アイツはまだ目覚めてないんでしょう?何故そんな事が?」
その問いに横の男は意味深な笑みを浮かべ、再びグビッと酒を煽り始めた。
根拠はあるが、話す気は無いらしい。
「…仲間に引き込むつもりで?」
説得役を言い付けられれば断固拒否しようと身構えれば、まさか。とアッサリ否定され面食らってしまった。
「次の島までだ。今降ろしてもアイツの舟は置いてきただろ」
「まぁ…そうですが」
…普段は泣きわめく奴を海に投げ捨てるなど、平気でやり兼ねないこの男がサラッと述べるその腹の内までは俺も読めない。
だが、後で俺の部屋にあの女の相棒を取りに来い。そう言われた所で、やっと今回の酒の理由を把握した。
どうやら最終判断は俺に託すらしい。
「あんたはどう見る?」
全て理解した俺が言葉少なく質問すれば、それだけで全て伝わった様で横の男は、自身の右手を胸の位置でプラプラさせながら、面白ぇ女だよ。と酒を飲み干した。
そう言えば…此処に来た時から若干右手を庇う様な仕草を見せていたな。
「船長…」
その右手をどうしたのか尋ねようかとも思ったが…
“……キュポンッ”
きっと答える気は無いだろうと思い直し、俺は手元にある酒瓶のコルクに手をかけた。
引き受けよう
(やはり故郷の酒は一味違うな)
(ペンギーン!!今日の酒はうめぇな〜)
(シャチ…お前は向こうで飲んでろ)