BOOK

□No.23
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「お前の旅の目的はなんだ」


いきなり寄越されたその質問に、それ説明すんの2回目だよ…とため息混じりに、先程クルーにした説明と同じ言葉を並べる。


『あ…』


だけど、それは海に出た時の目的だったな〜。とも思い直し、ほんのチョッピリ付け加え。


『でも今の目的は…海楼石かな。私は飽く迄も首刈りとして名を上げたいし』


その答えに船長さんは馬鹿にしたような声を寄越した。


「フンッ、能力者が忌み嫌う代物を自分から求めるたぁな…」


趣味がわりぃ。そう鼻で笑う船長さん。


『私だってこんな能力じゃなきゃ大歓迎だったけどさッ。ロギアとかが良かったなぁ…なんかカッコいいし?あ、そう言えば船長さんも能力者なの?』


よしッ!!我ながら自然に聞けたッ。


“バラす”宣言の真相を…さぁさぁズズイと話しちゃって!!


さぁ、さぁ!!


「………」


ワクワクしながら船長さんの答えを待つも、一向に答えが来ない…早く言えよ。


「…とりあえずお前は、その鼻血の跡が残ってるアホ面をどうにかしろ」


やっとその重たい口を開いたかと思えば、バサッと乱暴に投げつけられたのは船長さんのタオル…


慌てて鼻を確認すると、何だかカピカピ…!!


最悪だ!!恥ずかしい!!ってかもっと早く教えてよ!!最初から気付いてたくせにコノヤロー!!


駆け込んだシャワー室で綺麗に鼻血を洗い流し、ホッと一息付けば、肝心な所ではぐらかされた事に気が付いた。くそー…


『…あ』


そう言えば鼻血で思い出したけど、ストック補充してないな…そう顔を拭きながら右腰に手をやると…あれ?


『ほ?…へッ?!ウソ!!』


私のストックボトルが…無いッ?!


慌てて部屋に戻り、船長さんッ!!と声を荒げる。


すると奴は私が並べ直した本の山を指でなぞりながら、いちいち叫ぶな…と呆れ顔を向けてきた。


『あの…私の腰に、それぐらいのボトルがぶら下がってたと思うんですが…』


私がベッド脇に置かれた酒瓶を示しながら恐る恐るそう尋ねれば…


「あぁ、アレか…」


不敵な笑みを浮かべて、もう要らねぇだろ?なんて呑気に声を放つ船長さん。


いや要る要る要るよ!!何故そのような判断をお前がくだすのだ?!


「フフフッ…」


じゃなくてさ?!


『船長さん私あれが無いとまた貧血に陥る恐れがあります。次こそは死にます』


だから返して下さいお願いします。台詞は棒読みだが、一応頭は45度丁寧に下げてみる。


「………」


だけど船長さんは無反応…やべぇ、頭上げるタイミングが分かんね。


『………』


…そろそろ疲れた。


コッソリ、そろ〜っと徐々に頭を上げる中、俺が最初に言った事を忘れたのか。と、船長さんからため息混じりにもらされた。


最初に言った事?…あぁ、血を流せばバラすってやつですかい。


『でもそれはこの船に居る間の話でしょ?次の島着いてもボトルが無かったら困る!!』


クソ丁寧に頭まで下げてんのにッ…良いよ、良いよ!!新しく良い感じのボトルを探しますー。


「はぁ…」


とりあえず室内に転がる空き瓶を品定めし始めた私へと、再び向けられた船長さんの盛大なため息。


なんで私がため息つかれにゃならんのさ。


ムスゥっと不貞腐れる私へ、何やら引き出しをゴソゴソ漁っていた船長さんが、ホラよ。と見慣れた雫型のボトルを投げ渡してきた。


おぉ、コレは私のベストストックボトル!!略してベスボ!!…ださッ!!


でも良かった〜捨てられてなかったのね!!


歓喜のあまり手元のベスボに頬擦りしている私の耳に響いたのは、心なしか不機嫌な船長さんの声…


「それを使う時は俺に言え。俺が抜き取ってやる」


お前がやるとまた傷が広がりそうだ。そう言われ、私のリスクの条件まで解析したのかよコイツ…と、違う意味でまたこの人に頭が下がった。


でも本物の医者にやってもらえるなんて…何かすげぇツイてる?!やったね!!


『うんッ。よろしくお願いします!!多分3日後…ぐらいに船長さんに頼むかな?』


輸血した血液って、どれくらいで私のものになるんだろう。なんて考えてると、船長さんじゃねぇ。ってまた不機嫌な声…いやいやアンタ船長でしょ?


「ローだ」


『………え、そう呼べって事?』


予想外!!


「…嫌なら構わねぇよ」


あれ、何か拗ねてる?…結構可愛い所あんじゃん!!


でもトラファルガーって呼べって言われなくて良かった!!絶対そのうち噛むからねッ。



呼びやすい君の名



(…ロー)

(…何だ)

(いや、呼んだだけ?)

(……うぜぇ)
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