BOOK

□No.29
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『サッパリしたぁ』


身体も、心もホクホク状態。そしてそのままお礼を告げて部屋を去ろうとする私に待ったの声…


「そのまま此処座れ」


『へ?』


ポーカーフェイスのローからソファーに座るよう促され頭に“?”。


何だ何だ?と思いつつ、とりあえず大人しく従う。


「………」


すると、掴み上げられた左腕の傷の具合を丁寧に確認され、ローは何か納得したのか新しく包帯を巻き直し始めた。


すぐ近くにあるローの顔をマジマジ観察。


伏せられた目にはくまが目立つものの、何だかそれすらも只ならぬ色気を放っている。


男のくせに…その色気と長い足を少し分けろ。


「ミラー」


『ッ…』


ビックリした…初めてローに名前呼ばれたぞ。ちゃんと私の名前知ってたんだ…ちょっとくすぐったい気がするのは何でだろう。


なに?と平静を装い尋ねれば、ローは少し間を置き言葉を続けた。


「お前、男と一緒に旅をしてたのか」


…ん?いきなりどうした?男?


『………?』


あぁ、ジギーの事かな?


『んー、まぁ最初の1年だけだけど』


でも何でローがジギーの事知ってんだ?私話したっけ?


「…ベポが心配してたぞ。お前が悲しそうな面で“ジギー”って名を呟きながら寝てたってな」


あぁー成る程ね。まさか寝言まで出てたとは…


そういや随分前に確認してから、ジギーの手配書見ない様にしてたから…全然アイツの近況知らねぇや。


だから、久しぶりに夢に出てきたのかも。俺を忘れんなって…


そろそろ確認するか…あ〜また額上がってんだろなぁ、アイツ。


なんて考え事をしてた私の耳に、純愛だな。って鼻で笑うローの言葉は届いていなかった。


「終わったぞ」


私の左腕を離し立ち上がったローにお礼を言うと、奴は口角を上げて私の頭を優しく撫で、そろそろ行くぞ。って扉に向かい歩き出した。


『ッ………』


その背中をボーッと眺める私の心臓が、ギュッと締め付けられたように、ジンジン痛み始めている…


「…?…どうした」


『…ううん、何でもない。行こっか!!』


頭に残るローの手の温もりが、何だかジギーのソレとよく似ていて…泣きたい程懐かしい気持ちで胸がイッパイになった。



優しい手



(あッ!!ミラーお前何処居たんだよ?探したんだぞッ)

(ローの部屋でシャワー借りてた。ごめんね)

(あーだから着替えてんのか…なんか前にも増してチンチクリンだなッ)

(てめ、笑うなッ!!)
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