BOOK

□No.30
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「随分難しい顔をしていますね」


頭上からそんな声が降ってきたが、面倒だった為そのまま無視を決め込む。


たがそんな俺を気にも止めず、なかなか旨い。そうつまみを乗せた皿と酒瓶を片手に、ペンギンが俺の隣へ落ち着いた。


「今回の敵…戦闘は最悪だったが、酒の趣味だけは誉めてやっても良い」


「確かに…なかなか旨ぇな」


俺等が飲んでいる物は共に、年代物の度数もそれなりに高い高級酒だ。


「こんな良い酒を、あんな味の分かんねぇ奴等に飲ませるのは勿体無いな」


横でペンギンがそう悪態つく。


「…そうだな」


それに賛同しつつ、しかし本当に良い酒は5〜6本既に俺の部屋へ持って行ってる…という事は隠しておこう。あれは俺のだ。


「おぉーッ!!ミラーちゃん3人抜き!!」


湧き上がる歓声に、アイツ等まだやってたのか…そう小さくため息を吐けば、心配ですか?と何やら楽しそうなペンギンが声を寄越した。


「ミラーは不思議な子だ。この船に乗ってまだほんの数日なのに…随分前から一緒に居る気がする」


…どうやら普段他人を寄せ付けないこの男は、アイツがひどく気に入ったらしい。珍しい事もあるもんだ。


互いに目前の喧騒をつまみに黙って酒を飲み進める中、この沈黙を破ったのは俺だった。


「……ジギーって名を知ってるか?」


「ジギー?…いや、聞かない名だ」


かぶりを振るペンギンは、否定の意と共に怪訝な顔を寄越す。


やはりな…ハート1の情報通が知らねぇんだ。奴は賞金首では無いらしい。


「そいつが何か?」


横目で尋ねるペンギンに、以前ミラーと旅をしていた奴だ。そう教えてやればコイツは一人何か納得し始めた。


「へぇ。そう言や連れが居た事もあるって言ってたな……気になるんですか?」


その質問には答えず酒を煽る。


すると何やら考え混んでいたペンギンが、2本で良いですよ。そう謎の言葉を寄越してきた。


「今回アンタがくすねた酒を2本譲ってくれりゃ、調べましょう」


「ッ……」


…全く。目敏い奴だよコイツは本当。


降参だという笑い方をする俺に向かって、決まりですね。などと心底楽しそうに酒を煽るこの男には、どうやら隠し事は出来ない様だ。



勝てないな



(下から安いのを2本渡すか…)

(そう言えば、俺が目を着けてた最高峰の酒が無くなってるんですよねぇ〜)

(ッ?!チッ…バレてたか…)
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