BOOK
□No.37
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雨に足を取られながらも、皆着々と海軍を殲滅していってる様だ。
その優勢な状況に俺も、海軍共の数を半分にした後は適当に傍観をしている。
未だにペンギンは戻らない。まぁ、船内にも海軍の奴等は居るだろうが、あの芋くせぇ大佐はこっちに居るんだ…心配は要らねぇだろう。
海軍のもう一つの狙いであるミラーへと目をやれば、アイツは甲板の端で剣士らしき奴と応戦している所であった。
『オイショー!!』
「チッ!!」
すばしっこく動き回るミラーは剣士の太刀を器用に全て避け…成る程、遊んでやがんなアイツ。
『うひょッ?!』
だが次の瞬間、剣士の切っ先がミラーの右足を微かに捕らえた。それと同時に剣士の足からは薄くも雨と共に血が滲む。
「ったく油断しやがって…」
俺の口から不意に漏れたこの悪態は、激しく打ち付ける雨音に掻き消された。
自身を襲ったその不可解な現象に、少し困惑気味の剣士だったが、すぐにミラーの“特異体質”を理解した様で…
「俺だと部が悪いな」
そう呟く剣士は何故だか刀を納め、クルー数人が対峙していたあの芋くせぇ大佐を呼んだ。何をする気だあの野郎…
普通の攻撃はアイツに効かねぇ。そう安心しきって成り行きを見る俺に海軍の下っぱが、トラファルガー!!と突っ込んで来た。
「アチョーッ」
そこへすかさずベポの蹴りが入る…甘ぇんだよ。
そして再びミラーへと視線を戻し…そこで俺は息を飲んだ。
「なんだありゃ…?」
その視界に入ったのは、あの芋くせぇ大佐の体から、ロープの様な物がウヨウヨ伸びミラーの腕に縛りついている奇妙な光景…あの大佐、能力者か。
アイツ等しっかり足止めしておけよ…
先程まであの芋くせぇ大佐と対峙していたクルー共に目をやれば、今度はあの剣士と交戦している真っ最中であった。
「大佐の邪魔はさせないぞ海賊共ッ」
成る程…あの男、中々出来るな。
一方ミラーはやっと牙で腕を捕らえていたロープを切り離したらしく、もうッ!!これぐらい大人しく斬って!!などと何やらご立腹だ。
何にしても…あれじゃ相性が悪いな。
ベポにでも行かせるか。そう考える中、芋くせぇ大佐の伸ばしたロープがミラーの両足を捕らえ、アイツはそのまま逆さ釣りに…あぁ…あの馬鹿。
『っく、もぉーウッザ!!』
次の瞬間、ミラーがその腰に下がったストックボトルへと手を伸ばすのが見えた俺は、大きく舌打ちを吐き出すと共に素早く動き出した。
「ROOM!!」
直ぐさま能力であの芋くせぇ大佐の身体をバラし、そのまま柵の向こうへ放り捨てる。
『ふごッ』
奴から解放されたミラーはゆっくり甲板へと投げ出された。
『あれ、アイツは…?ん?…ロロ、ロー?!…べ、別に私!!あのッ、その…』
静かに歩み寄る俺を視界に捉えるなり焦りを見せるミラー。
「言い訳はいい。お前はもう下がれ」
甲板を見渡すとほぼ戦闘は終わっており、大佐の有無に関わらずとも此方の勝利は確実だろう。
「で、海楼石はあったのか」
『ん?あぁ…無いって…』
俺の質問に弱々しく答えるコイツも、少しは自分が悪いと自覚しているようだ。
その証拠に、俺と全く目を合わせ様としない。全く…まるで子供だな。
ポンッと俯いたままのその頭に手をやれば、ごめんなさい…とミラーは素直に謝罪を述べた。最初からそう言え。
「船長〜。全部終わりましたよ〜」
クルーがそう明るい声を寄越し、戦果を確認しようと顔を上げたその時…
“ドガーンッ!!!!”
「ッ?!」
激しい爆音と共に、海軍の船から火の手が上がった。