BOOK
□No.2
1ページ/1ページ
程良く賑わう街中の、とある市場。
普段は商いに精を出す店主の呼び込みや、子供が行き交う中発する笑い声で溢れているこの場所も…
『だーかーらぁーッ!これは私が先に見つけたんだってば!いい加減諦めなって!』
「はぁ?!これは俺が先に手を付けてただろ!お前こそ諦めて他を探しやがれ!」
今日に限っては、少し違う賑わいを見せていた。
『他ならとっくに行ったっての!この店で最後、そんでこれが最後の一個!』
少女は、身の丈程の得物をその背中に担ぎ…
「なら尚更譲れねぇよ!これ持って帰らねぇと俺が船長にバラされる!」
少年は真っ白のツナギに、帽子とサングラスという出で立ちであった。
『そんな事知らないよ!私は今!これが無いと死ぬの!良い?死・ぬ・の!それでも譲らないってならアンタ鬼、いや…悪魔ね!』
「だぁーッ!うるせぇな!とにかく、これは俺がもらうから、お前は来年まで待て。じゃッ」
互いに強く握りあい、一歩も退かぬその両者の手に収まっている物は、一つの深紅に染まる変わった果実…
『そっか…分かった。私は来年まで待つ…』
「お?なんだ案外聞き分け良いじゃんおま『なんて言うかボケェーーッ!』は?ちょ?!」
『人が丁寧に頼みゃ調子乗りやがってコノヤロー!だいたいテメェ、レディファーストって言葉知らねぇのかよ?!』
「はぁ〜?!何が丁寧だぁ?!だいたいこんな口のワリィ女の何処がレディだってんだよ!」
『あぁ?!何なら私がレディって証拠を今すぐ見せてやろうかバカヤロー!』
良いぞ良いぞ姉ちゃーん!脱げ脱げ〜ッ。
そんな野次飛ぶこの街は、今日も…平和?
最後の一つはどちらの手に
(お前等よくそんな派手に騒げたもんだな)
((ゲェ!海軍!))