BOOK
□No.6
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「ふふふッ…」
段々と周囲の雑音が一つ、また一つと消えてきた頃、とうとう俺の笑い声がこの場を占めた。
「クルーの中でも俺の素早さはトップクラスなんだよ!BBさえ手に入れば、あのバカ女とつるむ必要もねーし?船長にバラされずに済むぜッ」
がっはっはーッ!
我慢出来ずひと頻り高笑いした後、完全に人の気配が無くなったのを確認して、ちょっと休むかな。って速度を落とす。
そんで丁度良い感じの木陰で完璧に足を止めたその瞬間…
『甘いッ!』
目の前に、あのバカ女が現れた。
まさかその背中に、刀にしては馬鹿デカイ剥き出しの得物を背負ってるコイツに追い付かれるなんて思って無かった俺は、一瞬フリーズ。
『ハァ、ハァ、ハァ』
俺も本気で走って無かったとは言え…よくこのスピードに追い付いたな。伊達に1億超えじゃねぇって事か。
『ハァ、ハァ…ッ…』
余裕タップリにそんな事考えてたら、肩で激しく息をしていたバカ女がいきなり、真っ青な顔して…
“バタリッ…”
そのまま地面目掛けブッ倒れた。
「………」
俺、またフリーズ。
『クソ…血が…足り、ない…』
そんな悪態つきながら、やっとのこと仰向けに体勢を変えたバカ女が恨めしそうな顔で俺を見上げる。
『死んだら…一生呪ってやるから』
そして真っ直ぐ俺を捉えて、絶対に。なんて物騒な事言い出しやがった…何なんだよこの女。
でもその目は思いの外強い光を放ってて、不覚にも俺はコイツから目を背けられなかった。
強い光を持ってるくせに、妙に澄んだその瞳に俺の放心顔が写り込む。
…想像と違う事ばっかだ。
「お前…」
その異名通り、綺麗さっぱりスパーンと相手の首を刈り落とす…冷徹な殺人鬼。
「本当にあの首刈りなのか?」
それが、この女…?
噂と違って、そこまで凶悪な奴じゃねんだろうな…その真っ直ぐな瞳を見つめながら、俺はそんな事を考えていた。
独り言の様になってしまった俺の問いに、バカ女は相変わらず大きく肩で息をしながら、小さく口元を動かし…
『もう首は…刈れない』
それだけ弱々しく呟き、俺からソッと目をそらす。
「どういう意味だよソレ」
俺が投げ掛けたその疑問には答える事無く、コイツは静かに目を閉じていった。
―――――---
「あーもうウザッてぇ枝だなコンチキショー!」
気が付けば、俺は船へと一直線に猛ダッシュしていた。
『……ぅ…』
…バカ女を、この背中に担いで。
何でそんな事してんのか自分でも分かんねぇけど…
「チキショー!!」
身体が勝手に動いちまったんだよ。
船に着くや否や、俺同様BB探しに出ていた他のクルーから不躾に向けられた視線や問いかけをガン無視して、俺は勢い良く船長室へと駆け込んだ。
本当…何でこんな事してんだろう俺。
本能に従う
(船長ッ、こいつ酷い貧血らしくて…!)
(…貧血ってより、死にかけだな)
(船長…あの……)
(…お前が持ってるソレ……BBだろ。そいつを食わせりゃ解決したんじゃねぇのか)
(えッ、だってこれは船長の…)
(…そいつを医務室へ運べ)
(!!はいッ)