BOOK

□No.7
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『んー………んへ?』


目が覚めると、ボンヤリとした視界いっぱいに機械的な天井が広がっていた。


まだボーッとする頭で周囲を見渡し目に入ったのは…この右腕から管が伸び、ベッドの傍らに佇む点滴へと続いてる、なんて見慣れぬ光景。


…どうやら私はまだ生きていて、何処かの心優しい誰かに助けられたらしい。


腕から伸びる管を見る限り、キャスケット君はあの後私にBBを食べさせてくれ…なんて事はなかった様だ。


『はぁ…』


本当に呪ってやろうかあの野郎。もしかして瀕死の私をあの場に捨てて去ったのか?鬼め。


少しずつ覚醒してきた頭で必死に現状を把握しようとすれば、今度は何やら左腕に言い知れぬ違和感。


普段、私の左腕は中指に嵌めたリングから、二の腕辺りまで伸びる黒い布で、手の甲から二の腕までをスッポリ覆って隠している。


『………』


しかし今はその布が、手首辺りでクシュクシュと頼りなく丸まっていた。


『うわー…』


肘から下には、先日の海上戦でつけた傷がまだ生々しく残ってる筈だったのに…その傷が在るべき場所には、綺麗に巻かれた真っ白い包帯。


『最っ悪…』


その丁寧な治療痕に、私の口から漏れる盛大な舌打ち…


あれだけの傷だ…きっと何針かは縫ったはず。


もし治療してくれた医者が私の体の“異質”に気付いたら…いや縫ったんだ。確実に気付いてる。


クソ、めんどくさ!


まぁ、きっと相手は一般人。もしかしたら私の事なんて、何も知らないかもしれない…大丈夫、かな?


とりあえずお礼だけ言ってさっさと出てこう。うん、そうしよう。


目が覚めた以上長居する気なんざ更々無い私は、右腕から伸びた管を乱暴な仕草で取り外しにかかった。


その瞬間、ガチャっと控えめに音を立てて動いたドアノブ…


『…え?』


「ん?あーまだそれ外しちゃ駄目だよー」


完璧に扉が開くと同時に、まったくもー。なんて響いた呑気な声。


「気分はどう?」


『…………』


あれ?私まだ、完全に頭が起きて無いのかな?


「まだゆっくりしてないとダメだよ?」


目の前で、オレンジ色のツナギを着た…白熊が喋ってるぞ?


「痛いところ無い?大丈夫?」


ん?あれ?これは夢ですか?


とりあえず、起きたんならキャプテン呼んでくるねー。そう言ってドタドタ去ってゆく白熊を黙って見送り私は、自分のホッペを思いきりつねってみた。


『ッ…』


うん、すげー痛い。



現実だった?



(ん?そう言やあの白熊、今キャプテンって言った?しかもあのツナギ見覚えがある様な無い様な…いやまさかね…)

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