BOOK
□No.8
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グランドラインは何でも有り。なーんてよく言うけど…私はそんなの、信じない。
(気分はどう?)
喋る白熊が居るなんて事も…
「大分血色も良くなってきたな。気分はどうだ」
今、私の目の前で白熊と同じ事を淡々と尋ねる…目付きの悪さに磨きをかける酷いくまのこの男が、2億のルーキー…トラファルガー・ローだって事も…
『………よく分かりません』
出来れば嘘であってほしい。
「お前貧血なんてもんじゃなく、本当に死にかけてたんだぞ」
体内の血液量ギリギリだったからな。なんて目の前の男は呆れ気味に続けるけど、私は正直今それ所じゃない。
『あの…あなたが治療を?』
恐る恐るそう尋ねれば、他に誰が居る。と奴は一蹴。
って事は、左腕の傷口を縫合してくれたのもこの男で、コイツは2億の賞金首で、残忍って事で名が通っていて…
『えーっと……』
不本意とは言え、私も1億超えの賞金首な訳で、ここはコイツの船の上で、きっと外にはコイツの仲間もワンサカ居て…あれ、殺られる?
まぁ、普通の殺り方じゃ私は死なないけど…
「治療したのは俺だが…半分は俺のクルーに感謝するんだな」
『??』
どうしよう…と、この置かれた状況に頭を悩ませている私へ、目の前の男がそんな事を言ってくるから頭の中が更に困惑。
“?”でイッパイイッパイ。
全く意味が理解出来てない私を尻目に、トラファルガーが言葉を続けた。
「倒れたってお前をここまで運んで来たのは、うちのクルーの1人だ」
その内会うだろ。って…もしかしてその運んでくれたっての、キャスケット君の事かな?なんだ結構良い所あんじゃん。
でもやっぱり私が死にかけてもBBはくれなかったのね。へッ。
『助けてくれてありがとうございました。でも私、此処に長居する気は無いんで。そのクルーにもお礼言っておいて下さい』
ペコリ、と頭を下げベッドから降りようとする私にトラファルガーは、フフッ…と何やら意味深な笑み。
「とりあえず、直クルーが飯を持ってくる」
食っとけ。それだけ言って部屋を出るこの男の背中を私は呆然と眺めた。
だから、長居しねぇってば。
だけどそう思ったのも束の間、再び勢いよく開けられた扉から顔を覗かせたのは…
まだ帰れない
(ご飯持ってきたよー)
(ゲッ、喋る白熊再来ッ!)