BOOK
□No.9
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久しぶりの来客にコックが腕を奮ったと言うその料理は確かに美味しくて、恥らいも無く私はペロリと完食してしまった。
『ふぅ〜…』
満腹だぁ〜。と、一息つく私の向かい側…
「この船に他の人が乗るのも珍しいんだけどさー」
女の子なんて本当珍しんだよー。なんて呑気に話す、謎の白熊。
その姿を横目に私は、こんな可愛いモフモフが実は着ぐるみで、中の人がオッサンだったら嫌だなぁ…だとしたら中身、相当臭そう。なんて事を考えてた。
「そうそう、そう言えば君のために、コックに特性ジュース作ってもらったんだ!」
そう言って白熊は背後のテーブルに腕を伸ばす。
「俺、これ好きなんだよねー」
『…なにコレ』
ニコニコしながら何やら赤黒い液体が入ったグラスを寄越す白熊。この時点で嫌な予感しかしない…
恐る恐る受け取ったグラスを、不躾に観察する。
うーっわ、何か生ぐせぇし…え、本当にこれ飲むの?
「美味しいよ〜」
いやマジ勘弁してください。
躊躇う私に無理矢理グラスを傾けてくる、外見は何とも愛らしい白熊のその勢いに結局根負け。
『ッ……』
渋々、謎の液体が並々揺れるグラスを私は口元へと近付けた。
うわぁ…これ本当に人間が飲むモノなのかよ…やっぱクセェし。
『はぁー…』
覚悟を決め深く息を吐き出す…何でこんな気合い入れないかんのさ。
「それ飲めば貧血なんて一発だよッ。俺も戦闘の後とかによく飲むんだー、海獣の鮮血ジュース」
『ぶーーーーッ!!』
ニコニコ嬉しそうな白熊の予期せぬその発言に、私はたった今、決死の覚悟で口に含んだソレを見事に全て綺麗サッパリ吹き出した。
『ゲホッゲホッオゲェ!!』
海獣?海獣って言った今?!しかも鮮血?!んなモノ…飲めるかバカ野郎ーッ!!
あまりの衝撃に声を出せないまま口をパクパクさせてる私の周りが殺人現場。
「あーッ!もったいない!要らないなら俺が飲むよ!」
若干怒った様子で、私からまだ半分以上中身の残ったグラスを奪い取り…美味しそうに一気にゴクゴク飲み干す白熊。
うわッ、口の周りがめちゃグロテスク…
「そう言えば、船長があと1日は絶対安静だって」
プハーッと満足気に口元を拭いながら声を寄越すこの白熊は、私の冷めきった視線には気付いてないらしい。
でもあと1日かぁ…まぁ、助けてもらったし?1日ぐらい大人しく言うこと聞いとくか。
そう思い私は、了解。と一言簡潔に返事を渡した。
「あと1ヶ月、よろしくね!」
はいはい、あと1ヶ月ね1ヶ月。
……1ヶ月?
『え、あと1日なんじゃ…』
聞き間違いか?そう恐る恐る白熊を見やる。
「あれ?キャプテンから聞いてない?もうブラッティ島出航しちゃったから、次の島までは一緒だよ。次の島まで、約1ヶ月だって〜」
……は?
予想外
(ちょッ!船長さん呼んで!今すぐ!)
(アイアイッ)