BOOK
□No.10
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「俺を呼びつけるたぁ良い度胸だな」
ベッドまで汚しやがって。そう言ってトラファルガーは、悪い目付きに更に暗い影を落とし、私の顔面目掛けボフッと新しいシーツを投げつけ睨んできた。
けど今は怯んでる場合じゃない!
『ねぇ、出航したってどーゆー事?!私の舟は?荷物は?次の島まで1ヶ月って何?!その間私どーすんの!まさかこの広いグランドラインのド真ん中に捨ててく気?!無理私泳げないし!!』
疑問と不安と怒りを一気にぶつければ、トラファルガーは心底うんざりした顔で、うるせぇ…と一言呟いた。いやいやいや。
「海軍が居ると分かっててのんびりする奴が何処にいる。ログがすぐ貯まったから出航したまでだ」
そう言って相変わらず馬鹿を見る様な目で私を見るけど…こちとりゃ運命かかってんだ。うるさくもなるわッ!!
まぁ確かに?海軍に存在がバレてんのに観光する海賊なんかいないだろけども?!
「だが…俺もお前に聞きたい事が有ったんだ。丁度良い…互いに一つずつ聞いてこーじゃねぇか」
時間はあるしな。そう呟き、フフッ。と笑う奴の顔を見て、コイツあの時すぐ下船出来ないの分かってて黙ってやがったな…ってフツフツ怒りが沸いてきた。
『じゃあ私からね!』
やり場のないこの怒りに、私は鼻息を荒くする。
『私の舟は?あの島の入江に泊めといたんだけど』
先手必勝とばかりに投げつけたその質問に奴から寄越されたのは、ただ簡潔に、ねぇ。の一言…はぁ?
「どうせお前みたいな女が一人乗ってたもんだ。たいした舟じゃねぇだろ」
むッ…そりゃ食料5日分も積めば横になって寝れない程狭かったけどさ。オールがなきゃ前に進まないアナログ舟だったけどさ!
でもアンタに愛着心ってもんは無いのかよ?!
「次は俺の番だ。その左腕の傷は誰がつけた」
『ッ!!』
うーわいきなりソレですか!まぁ、もう私の体の異質には気付いてんだろけどさ…
『…………』
苦々しく唇を噛み締める私に、容赦無く突き刺さる奴の視線。
本当なら文句の一つでも言ってる所だけど…先程寄越されたピンポイントすぎるあの質問に、私の怒りなんか既に遥か彼方まで飛んでってピューン。
答えを迷ってる私に対し、嘘はつかねぇ事だ。そう全て見透かす様な目で睨みを効かせるトラファルガー。
うん…嘘はよそう。きっとバレる。
そして大海原に捨てられる。