BOOK
□No.11
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『…それは、あなたの部下で試してみる?』
やっとの思いで発した台詞はそんなものだった。
トラファルガーの言葉に何も言い返せない私の、苦し紛れの悪あがき。
でも声が震えてる…我ながら情けない。
そんな私の安い挑発をトラファルガーは、フンッ。と鼻で軽く笑い流した。
「あまり舐めるな。病み上がりの女に殺られる程柔な奴はこの船にいねぇ」
…それは嫌味なぐらい大した自信ですこと。
まぁ、実際私も2億のルーキーの船に、自分から喧嘩売る程バカでもないですよーだ。
「最初に言っておく」
『…?』
覚えておけ。そう続けるトラファルガーは、最初から私に戦意など無いと分かりきってるって顔。本当悔しい。
「この船に乗る以上は俺がルールだ。黙って従うんだな」
そう言って奴は私の肩を軽く押し、汚れたシーツを勢いよく引き剥がした。
海獣の血だらけになったシーツは足元に丸めて放置され、明日にでも洗っとけ。とかけられた新しいシーツ。
ん?それってつまりは…そーゆー事で良いんですよね?
『…本当に?』
無意識の内、ポツリと声が漏れる。疑心と不安がこの心に収まりきらなかったようだ。
まぁ〜何だかんだブッ倒れた私を治療してくれたんだから、根は良い人…なのかな?
「なんだ、次の島まで泳ぎてぇならそう言え」
止めねぇよ。なんて…一応は、海に捨てられる心配も無いみたいだし?
ちょっとは安心しても良いの?
私が、ホッ…と安堵の息を漏らす中、だが…と、更に静かな声を寄越すトラファルガー。
静か、だけど…
『ッ?!』
何気なく顔を上げた先には、今までの比じゃない程に、威圧感タップリの視線があり…そのあまりに不意討ちだった重圧に、私の心臓が勢い良く跳ねた。
「この船にいる以上、血を流す事は許さねぇ。新しい傷なんか作ってみろ…バラしてやる」
分かったらそいつはコックに返しとけ。そう言って私の頭を掴みベッドに沈めるこの男は、今は大人しく寝ろ。と続けた。
さっきまで固く握りしめられていたフォークはシーツを剥がされる時、咄嗟にスウェットの裾へ忍ばせてたから、バレてないと思ったのに…
(やっと諦めたか)
まさか…あの時から?
トラファルガーが離れた事により、漸く私は重くのし掛かっていた重圧から解放され、深く息を吸い込み、全然隙の無い男の後ろ姿に向かってため息をこぼした。
こえー…少しでも、優しいかもー!!なんて呑気に構えた自分を呪いたい。
『……』
いや本当恐い、恐すぎる!!
しかもさっきのトラファルガーの発言からして、あの“バラす”宣言は本物…だよね。
…アイツも何らかの能力者な訳?!
まぁいずれにせよ、どーやら私は明日以降も生きてられるらしい…とりあえずは。