BOOK

□No.13
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迅速に輸血へと取り掛かり、女の右腕に針を刺したその瞬間…


「………?」


僅かに俺の身体が、何か言い知れぬ違和感を覚えたが…今は特別気に止める事無く、我ながら手際よく失血の原因を探る。


見た所…ここまで血を失う程の傷は見当たらねぇ。


だが、女の左腕を覆い隠している大袈裟な黒い布をずり下げた際…否応なしにこの目へと飛び込んできたその“原因”に、俺は少なからず驚愕した。


「…数が多いな」


露になったその腕には、幅深さ共にマチマチな傷が、肘から下にかけ幾重にも付いている。


中でも一番真新しい傷は、乱暴に無理矢理抉った様に深く…これが失血の原因であるのは一目瞭然だった。


何だコイツ…くだらねぇ自殺志願者なのか?


「………」


いや、そんな奴ならばとっくに死んでいる筈だろう。


じゃあこの傷は…まぁ良い、理由の解明は後回しだ。


頭を切り替え、相当深くイってるな。と化膿している傷口へと手元の消毒液を乱暴にブチまけた、まさにその時…


「ッ?!」


俺の左腕が、焼ける様な痛みを伴い激しく脈打ち始めた。


“ドク、ドク、ドク”


何なんだ一体…これがコイツの能力か?!


自身の左腕へと視線をやるも、特に変わった様子は何もない。


しかし、ドクドクと血管が暴れ回り、激しい熱を持ったこの感覚…その激しい痛みだけは未だ生々しくこの腕にある。


疑問は残るものの、とりあえず今はさっさと傷を塞いじまうのが賢明だ…そう思い縫合を開始すると、早くも俺は目前の女の、謎めいたこの能力の片鱗を掴んだ。


「…どういう事だ?」


今、俺は女の左腕の傷を縫合している…それは間違いない。


だが何故か…女の傷口へと針を通す度、俺の左腕に、手元と同じ等間隔で針穴の痕がついていく。


糸は確実に女の傷口を塞いでいってるにも関わらず、針が刺さる感覚も、糸が皮膚を通り引っ張られるその肉の感覚も…全て俺自身が感じているのだ。


「……チッ」


そう言う事か…面倒くせぇ能力しやがって。


不快感を露にしながらも、何とか縫合を済ませ、とりあえず女の治療は無事終えた。


“ガチャッ…ツカツカツカ”


休む間も無く、俺はその足で自室へと歩みを進め…


「チッ…どこいきやがった」


勢い良く踏み込んだ自室の本棚から、無造作に溢れる書物を乱雑に漁っていく。


その目的はただ一つ。


「……これか」


重なりあう書物の山から、やっとの事見付けだし、取り上げたのはある一冊の年季が入った分厚い本…


その古びた褐色の背表紙には“悪魔の実大図鑑”の文字が妖しく黒々と浮き上がっていた。


ゾオン、ロギア、パラミシア…


大まかに分類されたその中から“パラミシア”のページを開き、文字の羅列へと目を通す。


“ペラ、ペラ、ペラ…”


そして、一つずつ漏れが無いよう、そこへ書かれている能力の説明欄をなぞっていく。眠気覚ましのコーヒーなど必要ない程に、俺の集中力は高まっていた。


這わせる指先がインクで黒く染まっていくのも気にせず、ひたすらページを読み進める。


「………ッ」


そして、漸く求める説明を見つけた時には、既に外がしらみ始めていた。


「……フフッ」


あらゆる攻撃を…か。


その能力、どこまで万能なのか試させてもらおう。



まだ眠らない



(シャチ、シャチ起きて!!)

(ん〜?何だよベポお前…まだ起きる時間じゃねぇよ〜)

(キャプテンが凄い楽しそうな顔で部屋から出てきて歩いてったよ!!)

(…船長…また何か企んでるな…)

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