BOOK

□No.18
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私の正面でペンギン帽が笑ってる…正確に言えば“口元だけは”笑ってる。


『今の、ちゃーんと聞こえまして?』


そしてきっと私も同じ顔。


まぁ、私には視線だけで人殺す力も無けりゃ、こんなにも相手に威圧感与える事も出来ないけどさ。


「ふふ…何だその名は気に入らなかったか?そいつは悪かったな」


サラッと謝罪したけど形だけなのバレバレだっての。心を込めやがれコノヤロー。


互いにドス黒いオーラをぶつけ合う私達とは反対に、ベポは何度目か分からないお代わりを貰いに席を外し、キャスケット君は未だ自分だけピンクオーラ世界に浸かって…


「へへへ〜グフフ」


ってかそんなに船長さんに言われた言葉が嬉しかった訳?!


いつまでピンクオーラ出してんだよ…ってちょっと驚いたけど、でもそんだけ船長さんの事好きなんだって気持ちは凄い伝わってきた。


じゃなきゃ、あんなちょっとお褒めの言葉を言われたぐらいで、ここまでピンクにはならないよね。


でもさ…


「“首刈り”の名で億超えにまでなった訳だからな…てっきり気に入ってるのかと思ったよ」


『………』


デレてないで、少しはこっちの空気も読もうよキャスケット君。


ため息を付きつつ、私は再びペンギン帽に視線を戻した。


『あれは首刈りとしてじゃない。それに新たな億超えなんて騒がれてるけど、私の金額は9千6百万なの。今はそれ以外認めない』


遠慮なんかせず、思いっきり奴を睨みつけながらキッパリ断言。


ペンギン帽がどう切り返してくるかと身構えていたら、そういやさ〜。と今更キャスケット君乱入。


…いやお前かよ!!だから空気読めって!!


「お前初めて会った時も海軍にそう言ってたよな?それどーゆー意味だ?普通賞金額上がると喜ばねぇ?」


なんだ、デレつつちゃんと会話は聞いてたの。器用な奴だな。


『んー…まぁ普通だったら、私だって賞金額が上がれば嬉しいよ?』


ウンウンそうだよな?とコクコク頷くキャスケット君は身を乗り出しその続きを促す。


『でも私は“首刈り”として名を上げるって“約束”したの。だからこんな身体になってから上がった金額なんて…私にとって不名誉でしかないって訳』


ため息混じりに説明すれば、ん?こんな身体ってお前、もしかして能力者だったりすんの?なんて予想だにしない質問が飛んできた。


『は?』


何言ってんのコイツ。


その不自然な問い掛けに目の前の男共を見やれば、あのペンギン帽ですら多少驚いた表情で私をジー。


『……え、マジ?』


な…なんなんだよあの船長!!自分はさっさと私の能力暴いておきながら、船員には何も説明してなかったの?!


ん?…えッ?!って事はさ!!


『ち、ちょっと待って!!私が能力者云々ってのは今は置いといて…この船の人達は、私があの首刈りって事は聞いてるんでしょ?!』


今度は私が勢い良く身を乗り出して言葉を放つ。


『自分で言うのもアレだけどッ…そんな通り名からして危ない奴を、監禁するでも見張るでも無く、こんな野放しにしてて良いの?!』



ちょー不安ッ



(それってどーなのさ!!)

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