BOOK
□No.20
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今甲板では“見事俺様のみがBB入手したぞ祝い”と称した宴がハート1のお調子者、シャチにより、陽も落ちきっていない内から開かれていた。
先日、今日は散々走り回って疲れた!!と駄々をこね、出航するや否やベッドに潜り込み、今の今まで馬鹿みてぇに、ひったすら寝てやがったくせに…
「皆もっと俺を誉めろー!!」
調子に乗りやがってシャチの野郎。
まぁ、そうは言っても、酒が呑めるのなら名目など何でも良いもので…
「はいはい、凄いスゴーイ」
「頑張った!!いや〜シャチにゃ敵わんね〜」
「「「って事でカンパ〜イ!!」」」
皆適当にシャチへと賛辞を送り、各々好き勝手騒ぎ始め、主役は俺だーッ!!とシャチが拗ねる…
宴の8割をシャチが持ち出すこの船で、こんな光景はもう見慣れたものだ。
「ほらよ、ペンギンも飲めよ!!」
既に顔が赤らんでるクルーから渡された酒瓶を俺も煽る。
「…チッ」
今日の酒は安物か。
アルコールさえ含まれていれば何でも有り、な馬鹿共とは違い…俺は酒を選ぶタイプだ。
「はぁ…」
不味い安酒で満足出来る筈もない。
今しがた自分が飲み干した物と同じラベルがズラッと並んでる甲板を確認し、一気に気持ちが冷めていく。
「ガハハハハッ」
「やっぱ動いた後の酒はウメェなぁ〜ッ」
こんな酒で楽しそうに馬鹿騒ぎを続けるクルー達に対し、俺は盛大にため息を吐いた。
「今日の酒じゃ酔えないか」
残念だったな。そう笑いながらドカッと隣に腰を降ろす我が船長に、あれは酒じゃなく味のついた水だ。と悪態を一つ溢す。
「フフッ…確かに、一理あるな」
この船長も普段、何度注意しても飯には全くこだわりを持たねぇくせに、酒に関しては俺よりウルセェときたもんだ。
そんな船長が、今日の様な安酒しか無い席に顔を出すなど珍しい…そう訝しんでいると、オラッ飲めよ。と持参した酒瓶の内1本を此方へ寄越された。
「これは…?!」
手元のラベルに目をやれば、ソレは俺達の故郷…こんなグランドラインの中心地では中々手には入らない、ノースの上等な酒であった。
「はぁ………」
その瞬間、俺はこの男がこの場に来た目的を悟り、先程とはまた違う…しかしより深いため息がこの口から漏れ出た。
「受け取る前に聞いておこう…今度は何を企んでいるんで?」
持ち上げた顔の先に妖しく歪んだ口元が覗く。
「フフッ…」
相変わらず鋭い奴だな。そう笑う顔は昔と何一つ変わらない。
(海に出る。お前も来い)
ここからは遠い海の向こうにある島で、俺に特上の酒を持ってきたあの時と同じ顔だ。