BOOK

□No.21
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今しがた自室へと持ち帰った、大きな牙状の変わった武器を眺め見る。


三日月を真っ二つに割った様な形の、刀で言えば峰に当たる外側の弧には多少厚みがあり、内側にいくにつれ、それはどんどん薄くなっている。


僅かに白銀の刃が光る内側のラインは、ただ一言“鋭利”と表すには足りない程の鋭さを放っていた。


刀身の幅と言える黒い部分はやけに広く、湾曲さえしていなければ、女の背中などスッポリ隠してしまうだろ。


柄の様な取手の部分は無く、代わりに牙の根に当たる箇所の側面に、男の俺でも指を通せる程の握り穴が開けられていた。


そこには包帯の様に紅い麻布が固く巻き付けられており、その先端は牙の尖った先までダラリと伸びている。


成る程…この穴に手をかければ直接こいつを振り回せるし、穴から通したこの麻を持ち振り回せば、広範囲をも攻撃出来るって訳か。


女の腕力だけで綺麗に首を切り落とすのは至難の技だろうと思っていたが…こいつなら遠心力を上手く利用すれば、この形状だ。


刃さえ通れば、徐々に厚みを増すコレが自動的に刈り落としてくれるって仕組みだろう。


「面白いな。今まで多くの首を刈ってきたんだろうに…邪気が全くねぇ」


黒く光る美しい牙に触れ静かにそう溢す。


それは主人の心を表しているからか、またはその内側に潜めているだけか…


それを見極めるのが今回の仕事だ。


まぁ、船長が認めた時点で答えは半分出ているようなものだがな…


――――――---


翌日、朝から自室で今日中に仕上げておきたい仕事を終わらせ、本格的に動き出す前にとりあえず腹を満たそうと食堂へ向かった。


そしてその扉を開ければ、嫌でも視界に飛び込む普段以上に一際賑やかな一角が…


「お前絶っ対、俺にもうあのゲボマズジュース飲ませんなよ?!」


「アイ…すいません…」


『…いや落ち込み過ぎだよ!!』


そこにはベポとシャチがあの女と共に昼食をとっている光景があった。


昨夜交わした船長とのやり取りで、女への警戒心が多少薄れていた俺は腹を満たしたら女を探し出し、そして仕掛ける気でいたんだが…丁度良い所に居てくれたもんだ。


にしても、だ…


「お前も何とか言ってやれよ!!」


『え、いや私は…』


「本当すいません……」


『え?!ちょ、まだ何も言ってないよ?!』


馴染みすぎだろアイツ等。


これでもし不合格だったらあの2人を納得させる事の方が面倒くせぇな。
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