BOOK

□No.21
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一先ず料理を受け取り、食堂を横切りながら真っ直ぐ目的の席まで歩く。


その際、他のクルー達のソワソワした雰囲気がヒシヒシと伝わってきた。


一昨日の夜、船長があの女を“次の島まで乗せる”宣言をした後、ベポとシャチ以外の奴等には俺からあの女との関わりを規制している。


皆人が良く好奇心旺盛な奴等だ…本当は今も話したくてたまらないのだろう。


“ソワソワソワ”


…だが少しは隠せ。尻がモジモジしてるのがバレバレだ。


全く…と苦笑していた顔を一気に引き締め女に目をやれば、知らなければ誰も億超えの賞金首とは思わないであろう朗らかな笑顔を放っていた。


だが…


『…はぁ』


「ん?どうしたの?急に怖い顔して」


『え?あ、あぁ!!何でもないよ!!ハハ、ハハハ』


自分へと注がれるクルーの視線にしっかりと気付いている辺り、やはり“普通の女”とは言い難い。


これで何も気付いていないような奴なら、この時点で俺の役目は終わってたんだが…まぁ仕方ない。


「邪魔するぞ」


女の正面へと腰を降ろし、俺も“仕事”を開始する。


俺と顔を合わせた直後から、多少苛立ちが伺えた先程までとは打って変わり、女は大人しく居心地悪そうに手元の箸を運び始めた。


俺という存在に焦りを覚えたか、又はただ単にこの重い空気が嫌なだけか…まだその真意は分からない。


はぁ…時間を掛けるのも面倒だな。


わざと威圧的に振る舞えば、女は何とかこの雰囲気を変えようと必死に話題を探している様子であった。


よくよく見れば、コイツはシャチと同属らしく、その考えが全て顔に出ている。


あ、今何か失礼な事考えやがったな。


その後、女はシャチによって変えられたこの場の雰囲気に安心しきった顔つきを見せていたが…俺はお前を怒らせなければ仕事が終わらない。


面倒な事を引き受けちまったもんだ。


仕方なく圧を上げ俺から更に挑発してやれば、やっと女はソレに乗ってきた。


だが俺を捉えるその目は不快感は滲ませてるものの、殺気は皆無…


『私の賞金額は9千6百万なの!!』


その上訳の分からない事で怒っている。


シャチも加わり話が進むにつれ女が、何故自分を野放しにする?!と聞いてきたので、素直にその理由を説明してやればコイツは、すごい…と呟き完璧に脱力しだした。


おいおい、俺への対抗心は何処行きやがったんだよ。


『ふふッ!!私好きだよ、この船の雰囲気!!』


そして先程とは180度違う態度で俺達を誉めちぎる女は、既に俺が自分に向けていた敵意など忘れてしまったかの様に優しく嬉しそうに微笑んでくるもんだから、俺まで肩の力がスッと抜けちまった。


成る程な。あの時船長がコイツに敵意は無いと言ったのは、大方コイツの能力が関係してるんだろう。


って事は船長は既にコイツの能力を把握してやがるな…全く。


にしても不思議な奴だ…敵意も殺気も無ければ、警戒心も無いときた。


いや、一瞬で無くなったと言った方が正しいか。


首刈りなんて狂気染みた通り名はコイツに似合わない。そう思わせる笑顔で俺の手を握り返してきた柔らかい雰囲気を纏うミラーに、短い間よろしく!!と元気いっぱいに言われたが…


「よろしくな」


俺はその小さな手を握った瞬間、きっと長い付き合いになるだろう…何故だかそう感じていた。



根拠なんて無い



(確かに面白い奴だ。あの百面相…吹き出すのを堪えるのが大変だったな)
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