BOOK
□No.30
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「じゃあッ!!今夜の勝利と、無事新薬完成と、無敵のミラーにッ」
「「「カンパーイッ」」」
ギャーギャー騒ぎ始めたクルーへと、無敵って何だよ?!などと声を張り上げ、俺の横にいるミラーが口を尖らせる。
全く…元気な奴らだ。
『そういやロー、新薬って何?どんな効果があるやつなの?』
散々喚き散らした後で、俺と同じラベルの酒瓶へ口をつけながらミラーがそう尋ねてきた。何だコイツ…飲める方か。
「…増血剤だ。この前手に入れたBBから細胞を研究し複製した」
『えーッ、じゃあ半分は私のおかげじゃん!!』
感謝してよねッ。と、何故か偉そうに言ってくるミラーはきっと、BBが手に入ったのは自分のお陰だと言いたいんだろう。
「残念だな、BBが無くても薬は完成してた」
ただソレが早まっただけだ。そう諭すよう言ってもコイツは、素直じゃないなぁ?とニヤついた顔を崩さぬまま。はぁ…殴りてぇ。
「……お前いくら攻撃食らわねぇからって、今日みたいな事は今後するな」
あの時ミラーが斬りつけられた瞬間、何故だか頭に血がのぼった…無傷と分かっていても胸糞悪い映像だ。
『いや、あの時は私も必死であんま考えてなかったからさぁ』
でもまぁ気をつける。そう呑気に料理を口へと運ぶコイツに反省の色は皆無。
ため息を吐き酒を煽ると、ふいにミラーを呼ぶベポの声が響き、アイツは甲板の真ん中に出来た騒ぎの中へと姿を消していく。
「………」
そんな背中を見送る俺の頭には、ある疑問がひたすら思考を占めていた…以前、ミラーが一緒に旅をしていた“ジギー”という男についてだ。
アイツは…賞金額を上げるのは、両親に自分を知ってもらう為と、ある奴と競争しているからだと言った。
ある奴とは、ジギーという男の事なのか?だとしたら当然、奴もそれなりの賞金首の筈だが…しかしジギーなんて名は聞いた事がねぇ。
だとすると、旅をしていた男ってのは、ただアイツの特別な男という事か…そんで今でも夢に見ちまう程の存在って訳だろ?
大方アイツが捨てられたって所か…フンッ、おめでたい奴だな。自分を捨てた男を未だに想ってるなんざ。
「……チッ」
何故だかムカムカしてきた心中を落ち着かせる為、一気に酒を飲み干し、間髪入れず新しいボトルへと手を伸ばす。
「「「ギャハハハハッ!!」」」
『っぷはぁ!!おかわり!!』
「おぉミラー飲める口だねッ!!よし、俺と飲み比べだ!!」
騒ぎの中心から楽しそうな声が漏れてくる。アイツ等…明日は二日酔いで死んでんな。