BOOK

□No.32
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風が上がり波が荒れてきた。近いうちに激しくなるだろう…


時化に備え、二日酔いのクルー共を叩き起こそうと思ったが…


「はぁ…面倒くせぇ」


半分は未だ甲板に吊るされてるんだったな…身体だけ。


全く、こんな時に…とりあえずは奴等を元に戻してもらわねば話にならねぇ。


そう思いすぐさま船長室へと行ったは良いが、船長は相変わらずグッスリ寝ていて、他人が部屋へ入ってきたと言うのに起きやしない。寝起きの悪さはハート1だ。


そしてベットの反対にあるソファーでは、何故だかミラーが死んでいた。


頬を冷やせと渡した筈のタオルが頭に被せられているのが目に留まり、思い出すは昨夜の出来事…


───────ーーーーーー


『っぷはぁー。あははぁ私の勝ち!!』


ミラーが飲み比べ対決で9人目を倒したその時、この場に意識があるのはクルー数人と船長と俺、そしてシャチだけであった。


他、半分は既に自室へ戻り、後の半分は甲板で雑魚寝状態だ。


俺と船長、クルー数人はまず酔わない…酒に強すぎるんだろう。


シャチは弱いくせになかなか潰れない、一番面倒なタイプで…きっと、意識はあるが明日には割と最初の方から記憶が無い筈だ。


「よーしミラー!!俺と勝負らーッ」


『おぉ、アンタみたいなノー天気には負けないっての!!』


ミラーもかなり飲んでるな…まぁ意識はしっかりしてるみたいだが。


俺はツマミに手を伸ばしつつ、黙って2人を観察する事にした。


「オレらってなー!!お前みたいななー、チンチクリンには負けにぇーよ!!」


『あぁ?!だーれがチンチクリンじゃ!!テメェ初対面でもそれ言っただろ!!今日こそは私がチンチクリンじゃないって証拠見せたらぁ!!』


そう言ってパーカーを脱ごうとするミラー。前言撤回…酔ってるな、かなり。


仕方無しに止めに入ろうと腰を持ち上げた所で、すぐ隣から「ROOM」と響く低い声。


そして次の瞬間…


「『すいましぇんでしたーッ』」


そう勢い良く2人がこちらに向かって派手に土下座をかました。


奥でクルーがゲラゲラ笑っている…確かに、面白いな。


「ったく…」


船長が呆れたような深いため息と共にサークルを消し去った所で、また2人が騒ぎ始めだし、最早俺は苦笑しか漏れない。


本当によく似た2人だ…見ていて全く飽きない。きっと、隣の船長が未だ部屋へと戻らないのも俺と同じ理由だろう。


『アンタのせいで怒られたッ!!』


「お前が脱ごーとするかららろッ」


『テメェがチンチクリンって言うからだろがッ!!』


「あぁ?チンチクリンはチンチクリンじゃにぇかにょ」


『チンチクリンじゃねーよボケ!!確かめてから言いやがれッ』


ヒートアップする2人。


『…は?』


そして事件は起きる…
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