BOOK
□No.36
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ここ最近の俺は、一人部屋へと籠り、ある調べ物に没頭していた。
船長に極上酒をもらったから…というのもあるが、半分は俺自身の好奇心でもある。
先日ミラーの部屋で手配書の束を見つけ、ミラーが“誰か”の手配書を探していたのだと直感し…部屋の隅に捨てられた手配書を広げ、確信した。
…ミラーが競ってる相手は、コイツだと。
それだけなら別に良かったんだが…その手配書の男にはある“噂”があり、それが引っ掛かった俺は、この男について徹底的に調べる事にした。
「…くそッ」
そして粗方調べ上げたが…最後のピースが見つからない。
「何故だ…」
コイツとミラーの空白の一年を繋ぐ、最後のピースが…
この手配書の男とミラーが同郷というのは分かった。
そしてコイツの得物が“ホワイト・ファング【白い牙】”と呼ばれる、2対の小振りな牙という事も…
巨大な黒い牙に対し、その半分以下の大きさである白い牙。
その形体は、黒い牙をそのまま小さくした様な物だが…ただ一つ大きく異なるのは、その殆どが白銀の鋭い刃で成り立っていると言う事だ。
唯一コイツの得物が写り込んだ新聞記事の写真には、真っ白く、僅かに根本から黒い部分が覗く鋭い牙を両手に、男が暴れている様が写っていた。
コイツがミラーの競っている相手だというのは間違いないだろう。
だが、本当にそれだけか?俺の勘がミラーと共に旅をしていたのは、この男だと訴えている…
しかし、それを裏付ける証拠がどこにも無い。
(手配書に書かれてるコイツの名は、フルネームじゃねぇんだとよ)
以前酒場で聞いたその話しが頭の片隅から離れない。
しかし、いくら調べても名の続きが分からねぇ…今となってはあの噂が本当かどうかも疑わしい。
やはりジギーとコイツは完璧な別人なのか?じゃあジギーとは一体誰なんだよ…
「っくそ…」
完全に行き詰まった俺は、この一週間穴が開く程眺めた手配書を伏せ、一息入れようと食堂へ向かった。