BOOK
□No.37
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部屋で本を読んでいた際、ベポが船が見えると勢い良く飛び込んで来た。めんどくせぇな…
今良い所だからやり過ごせと手元に意識を戻せば、コイツはペンギンがヤル気満々だと言いやがる。
「………」
珍しい…何かあるな。
仕方無く刀を担ぎ土砂降りの甲板へ出ると、肉眼でも確認出来る位置に海軍の船が迫っていた。
あぁ?アイツ等とやり合うのかよ。めんどくせぇ…
「お前、ちゃんとした理由があるんだろうな」
雨を避ける事無く甲板の中央で構えるペンギンへ声をかけると、奴は、さぁ…まだ分かりません。などと意味深に笑ってきやがった。
周りにはペンギンに説得されたんだろう、不貞腐れたクルーと共に、何やら意気込んでるミラーの姿…
『あの大きさなら、それなりの奴が乗ってるよね!!海楼石あるかな?!お偉いさんなら賞金額戻してもらおッ』
前半はまだしも…後半は無理だろ確実に。
「はぁ…お前等もう腹くくれ。死人は置いて行くからな」
その言葉にクルー共は、しゃあね〜。雨なんかにゃ負けねぇぞ!!と覚悟を決めた様子で気合いを入れ始めた。
「っしゃー、暴れたるか!!」
「海軍とは久しぶりッスね!!」
「今夜はまた旨い酒が飲めそうだッ」
一気にこちらの士気が高まる。
フフッ…風邪引きゃ薬ぐらい出してやるか。
「2億の賞金首、トラファルガー・ローだら?!大人しく捕まるんだら!!」
『うーわ、アイツ何か田舎臭くね?』
その言葉にクルーの数人が吹き出した。テメェが士気下げんじゃねぇよ。
「ん?…ッ?!ヌ、ヌンラ大佐!!あの女ッ、首刈りです!!首刈りのクロスロード・ミラーですッ!!!!」
「なぬぅ?!何故アイツがハートの海賊団とつるんでるんだら?!…首刈りも捕らえるんだら!!どちらも逃がすんじゃないだら!!」
ミラーの存在で海軍は俄然ヤル気になった様だ。
だが当の本人は、あのオッサン大佐かぁ…じゃあ無理だな。と、何やら諦めた様でため息を吐き、服のファスナーを閉めその顔を覆った。
海軍側からは一向に砲撃が撃ち込まれる気配がない。どうやらこの暴雨に火薬がやられたようだ。
そのせいか飛び移れる距離まで船同士が近づいた瞬間、怒号と共に一斉に乗り込んで来た海軍共を尻目に隣を見やる。
「ミラー、今日はストックは使うな」
意気揚々と飛び出そうとするミラーにそれだけ伝えれば、コイツは何やら不満気だったが一応、分かった。という言葉を返してきた。
そしてミラーが走り出したのと同時…ペンギンが俺へ、船長。と小さく言葉を寄越す。
「俺は船内に侵入します。調べたい事がある」
奴はそれだけ言い、俺の言葉を待たずして早々と視界の悪い豪雨の中へと姿を消してしまった。
全く、この船は自由人ばかりだな…
一段と深いため息を吐きつつも左手に、ブウォンッと小さなサークルを浮かべ、俺も前線へと意識を向けた。