BOOK

□No.40
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「…ソイツがどうした」


今しがた困惑気味に出て行ったシャチを見送った船長が、静かに口を開く。


「…“解体師【バラシヤ】”はご存知で?」


俺の質問に船長は鼻で笑った。


確かに、知らない筈がない…残忍と謳われるこの人と並ぶ程“極悪非道”と言われる男だ。


“人体解体師”通称バラシヤ。


手配書の名はラーク・ロイド。


その賞金額は1億9千万。


“白い牙”の持ち主で、ミラーのライバル…


「で、ソイツが何だ。あの高級酒2本分の成果はあったんだろ?」


船長はニヤッと笑みを溢しながらベッド脇の椅子に腰を落ち着かせた。


「えぇ…それ以上の収穫ですよ」


心底楽しそうな船長とは違い、俺は少し表情が曇る…真実は思った以上に厄介だ。


「まず、先日ミラーの部屋で…俺はラーク・ロイドの手配書を見つけた」


それだけなら、俺も気付かなかっただろう…


「ミラーは何故かコイツのだけを丸め捨て、明らかにコイツを意識している雰囲気だった」


アイツの競ってる相手はソイツか。そう漏らした船長に肯定の返事をする。


「調べて分かったが、解体師とミラーは同郷の様だ…コイツの得物を知ってますか?」


かぶりを降る船長へ白い牙について説明をすると、僅かにその顔が強張ったのを感じた。そりゃそうだろう…


同じ様な成りの珍しい武器を扱う、同郷の2人…嫌でも行き着く答えは限られてくる。


…“深い仲”の2人だと。


「俺が最近自室に籠り分かったのは、此処までだ。これだけだと解体師はただのミラーのライバルってだけで終わる…」


そう、これだけだと“ジギー”という謎の人物が取り残されたままになるのだ。


「だが俺はミラーと共に居た男は、コイツだとしか思えなくてな…この時点では、解体師にまだ謎が残されていたからだ」


「名か…」


そう口にした船長は、どうやらあの噂を知っていた様だ。


「えぇ…その真意を確かめる為にも、今回の海軍船を見過ごす事が出来なかった…すまない」


俺の独断で皆に迷惑をかけちまった。そう謝れば船長は軽く笑い、良いから続けろ。と先を促してきた。


「収穫があったんだろ?」


えぇ…ありましたよ。驚きのね。
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