BOOK3
□No.13
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「用はもう済んだか」
部屋に戻るとローが大量の酒と帽子を置いたテーブルに、ソファーからご自慢の長い足を投げ出して酒を飲んでた。
『うんッ。荷物ありがとね』
隣に腰を下ろして、何の前触れも無くキスをすれば…ローが凄い驚いた顔してコッチを見るから、私は堪らず、ブッ!!と吹き出してしまった。
『待っててくれたお礼ッ』
嘘。したくなっただけ。
声を上げて笑う私とは逆に、なんかローは固まってるけど…とりあえず放置だッ。今はブロッサム酒!!
鼻歌を奏でながら、テーブルに並んだ酒瓶を見渡す。
そして目的の酒瓶に手を伸ばした時…その手をローに掴まれ、何だよブロッサム酒は私のだ!!って言いかけたけど…ボフッと勢い良くソファーに倒れ込んだせいで、その声は出せなかった。
『…ロー?』
「フフッ…あまり煽るなと言った筈だ」
私に覆い被さる男が妖しく笑う。
海楼石を手に入れるまで待つんじゃねぇの?!とは思ったけど…
『ッ…』
あまりにローが、愛しそうに私の頬に手を添えてくるから…何かそんなの、どうでも良くなった。
ローの首に腕を回したのを合図に、激しく唇がぶつかり合う。
いつもの優しく、柔らかいキスなんかじゃ無い…互いが互いを求め合う欲望だけが重なり、なんだか頭がクラクラしてきた。
『ロー…好き』
「…これ以上煽るな」
唇を重ねたまま、ローは私の頬からゆっくりとその指先を滑らせ、首筋を這い、鎖骨をなぞり…くすぐったさとはまた別のその感覚に、身体の芯がだんだん震えだす。
そしてローが私の服越しに胸元を撫で回し、ファスナーへと手をかけた瞬間だった。
“…ドタドタ”
「『……』」
“ドタドタドタドタッ”
「…お前、鍵かけたか」
『うん、かけてないね』
“バンッ!!”
「2人共帰って来たぁ?!」
あれ、寝る所だったの?なんて、こんな状況の私達につぶらな瞳を向けてくるのは…ベポォ…
「2人共酷いよ!!俺置いて遊び行くなんてッ」
酒臭い皆の相手するハメになったんだから!!ってその巨体で泣き付いて来るベポ…何か、怒るに怒れないのは何故?
ローも不機嫌そうにベポを押しやり立ち上がっただけで、能力を出す事は無かった。コイツもベポには結構甘いんだよなぁ。
「…はぁ、飯行くぞ」
ベポ、先に行ってろ。そのローの言葉にベポは一瞬渋ったけど、有無を言わさぬローの雰囲気に、肩を落とし出て行った。
『…プッ、邪魔されちゃったね』
何だかこの状況が面白くて、私が静かに笑みを溢せば…ローは盛大にため息を吐き、鍵ぐらいかけとけ。だってさ。
でも多分…それ、あんま意味無くね?
『あぁー…何か気抜けたら、本当にお腹空いちゃった!!ロー、ご飯行こ?』
帽子を手に取り、その頭へと被せてやれば、ローは不機嫌そうにキスをしてきた。ふふ、可愛いなぁ…
『あッ、これローに。いつもありがとね』
最後手元に残った、実は他の2本より値が張ったお酒を渡す。
するとローは、呆然とラベルを眺め続け…あれ、気に入らなかったかな…?
「フフッ…飲むのが楽しみだ」
やっと放たれた言葉は心なしか弾んでいて、再度重なった唇からは、上機嫌なローの舌が絡まってきた。
お約束
(あれ?そのお酒、全部持ってくの?)
(あぁ。アイツ等にやる)
(珍しい…)
(フフッ…俺には極上酒があるからな)
(……くさい奴め)