BOOK3

□No.11
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別に、シャチの実力を軽視してた訳じゃ無い。


毎日真面目に手合わせしてたら、嫌でも認めざる得ない程の奴だって事ぐらい…自覚してる。


でも…あそこまで凄まじい殺気を向けられるとは思わなかった。


シャチが私にそんな目を向けて来たのもショックだったけど…でも一番ショックなのは、それを受け流せなかった自分自身。


『シャチ…大丈夫かなぁ…』


宿までの帰り道、ボソッと漏らした私の言葉にローは何も言わないまま、黙って頭を撫でてくれた。大丈夫だって意味らしい。


『絶対自分を責めてるよね…私がしっかり受け止められてたら、そんな事にはならなかったのに…』


私が足元に目をやり、後悔の念に押し潰されそうになってると、フフッ。って、隣でローの笑い声が静かに響いた。


「だから強くなるんだろ?」


『うんッ…私はもう、迷わないよ』


先程の広場を後にする際、私の新しい決意を打ち明けると、ローは、お前が決めた事だ。って背中を押してくれた…優しい笑顔で。


『首刈りだとか能力者だとか、そんなのもう関係ない。1億だろうが2億だろうが…手配書に私の名が刻まれてれば、それで良いや!!ジギーと違って、私の写真にはちゃんとこの子が写ってるし!!』


正直、ここ最近は傷を負わないのを良い事に…戦闘中の緊張感、足りてなかったもんな…駄目だ駄目だッ!!


『ロー!!私、もう2度と自分から攻撃受けに行ったりしない。絶対自分の手で終わらせるから!!』


強く示すその決意に、ローは困った笑顔で私を見やる。


『おっしゃーッ!!雑貨屋行くぞッ。いや酒屋?樽の方が良いかなぁ?』


私が新たにストックボトルを調達しようと息巻けば、ローが今度は盛大にため息を吐き、抜く量は変えねぇぞ…なんて言ってきた。ケチくせぇな。


『とにかく買いに行くぞ。あとやっぱ、便箋も買う!!ジギーに手紙書こッ』


サイコ兄貴元気にしてるかなぁ。って鼻歌混じりにテクテク歩いてると、隣でローが、ブラコン…なんてボソッと呟く。でもそんなの全然気にしなーい。


乗り気じゃないローを無理矢理連れて、まずは雑貨屋で適当な便箋を買い、その後はプラプラ酒屋を梯子。


『ロー見て、ブロッサム酒だってよ!!初めて見たなぁ。美味しいのかな?』


「買ってみるか」


うんッ!!と勢い良く返事をした所で、ハッ!!と気付く…目的変わっちゃってるよ?!


まいどぉー。なんてご機嫌な主人に見送られ店を出ると、既に私達の両手には大量の酒瓶…しかも全然ストックボトル向けの物がねぇ…ははは。


私は上機嫌で歩き出したローの背中を眺めつつ、先程奴の目を盗んで、上陸時貰った金をはたいて買った3本の酒を、大事に大事に抱え直して、夕焼けに赤く染まる銀杏を正面に足を進めた。



探し物



(フフッ…今日は部屋で飲むか)

(…つまりはこの酒を、他のクルーにあげる気は無い、って事ッスね)

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