BOOK3
□No.12
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宿に着き、4階へと続く階段の途中…
『ローこれよろしく!!』
私は手元の、2つある紙袋の内の1つをローに押し付けスタコラサッサー!!
踊り場から続く廊下をそのまま駆け出せば、背後でローが何か言いかけたけど…結局黙って私を見送ってくれた。
目的の部屋の前で深呼吸を一つして、コンコンッ…と静かに扉を叩く。
すると直ぐさま、開いている。って声が響き、再度深呼吸をして、私はゆっくり扉を開けた。
『…あれ、ペンギンさんだけですか?』
確かシャチもこの部屋だと思ったんだけど…眉を寄せ小綺麗な室内を見渡す私に、まだ戻っていないな。そう先回りして答えをくれるペンギンさん。
『そっか…あ、ペンギンさんにコレ、お土産です』
私が先程買った内の1本を渡せば、ペンギンさんは凄く喜んでくれた。その様子に、私も心がなんだかホッコリ。
「なかなかの高級酒だな…高かったんじゃないのか?」
少し心配そうに眉を寄せるペンギンさんへ、私は腕を付き出しブイサイン。するとペンギンさんは優しく笑い、大事そうに手元の酒瓶を抱え直してた。
『ふふ。よく考えたらペンギンさん、昨日はずっと…あの時酒場で聞いた情報を調べてたんじゃないかなぁって思って』
お楽しみにだったなんて思ってしまって…いや本当お恥ずかしい。
『そのお陰で助かったし、ほんのお礼です』
お疲れ様でした。そう言った私の頭を、柔らかい手付きで撫でながらペンギンさんは私の腕に残された2本の酒瓶を見やり、船長にか?と優しく聞いてきた。
『いや…1本はシャチに渡そうと思ったんですけど…』
苦笑いの私にペンギンさんはその先を促す事無く、ずっと頭をナデナデナデ…
「そう言えばさっき、屋上の方でデカい鼠の気配がしたな…真上で騒がれたら、寝れないんじゃないか?」
『へ?ネズミ?』
気になるなら駆除すると良い。そう言って私の背中を押すペンギンさんの言葉の意味を、やっと理解!!
『ありがとうペンギンさんッ、そうします!!』
私はそう笑って、勢い良く駆け出した。
3段飛ばしで階段を駆け上がり、屋上へと続く扉を勢い良く開ける。
拓けた視界の先には、建物の低い縁に腰かけたその背中越しに見える、驚いた顔のシャチ。
「おまッ?!…何でここが?」
罰の悪そうなシャチの隣に腰を下ろし、へへッ秘密。って笑ってやれば、シャチから向けられたのは、少し安心した様な顔。やっぱり、不安だったよね…
『………』
「………」
2人の間に沈黙が流れる。辺りはすっかり真っ暗だ。