BOOK3
□No.22
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目の前で豪快に、先程俺から奪った酒を吹き出す女を見やる。酒は良い、飲む気分でも無かったからな…
だが…顔立ちは似ていないが、やはりクロスロードはあの忌々しい男の妹だと、認めざる得ない様だ…思考がこうも一緒とは。
俺は仮面で隠した顔を派手に歪ませ、以前…あの男と出会った時の事を思い出した。
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程よく晴れた昼下がり。見張りをしていた奴が、舟が見えると言ってきた。
甲板に出て確認すると、何の変哲も無い小舟が一槽。
たかが小舟だと思い、特に気にしていなかったが…その小舟から俺達の船へと乗り込んで来た男が厄介な奴だった。
「初めましてこんにちは。ちょっと俺の可愛い妹を探してるんだけど、さ……ーッ!!」
優雅に船首へと腰かけるのは1億9千万の首、人体解体師。
「妹だぁ?知らねぇよそんな奴。俺の船に無断で上がりこむたぁ、良い度胸だな…」
突然の訪問者に、仲間から無理矢理起こされ機嫌の悪いキッドは、すぐさま能力を解放した。
奴が言葉を続ける事無く、至極嬉しそうな顔をして白銀の得物を構えだしたからだ。
「ッ?!…どういう事だ」
甲板の隅で、結果の見えてる戦いの見学をしていた俺の背後にある刃は、今にもキッドの元へと飛び出して行きそうなのにも関わらず…奴の両手の刃に、その様子は無い。何故だ…?
「お前良いもん着てるな!!そのモフモフコート、俺にくれねぇ?!」
目を輝かせ勢い良くキッドに突っ込むあの男に、キッドですら困惑していた。
奴の刃がキッドの腕を捉える寸前で、キッドが舌打ちと共に周囲から寄せ集めた金属の束で腕をガードし、解体師が後方に距離をとると同時…皆が感じていた疑問を口にする。
「ん?あぁ、コイツ?これ牙。最近よく脂吸ってるから、絶好調だぜッ」
なぁそのコートくれよー。そう両手の刃を不気味に研ぎ合わせながらも、視線はキッドのコートにしか向いていない…何なんだコイツ。
「そんなに欲しいなら奪ってみろよ」
そう挑発するキッドの派手な口元も妖しく歪んでいる。随分楽しそうだな。