BOOK3

□No.19
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あぁ〜最高の気分だー。今の俺ならペンギンにすら勝てるね〜絶対。気持ち良いなぁー…


新入りの感覚は完璧だし、上機嫌で戻ればあの、あの船長が直々に酒くれたって言うし…何よりミラーが俺にって酒くれたし!!


そんな日の酒が進まねぇ訳ねぇよなーはははぁ。


でも、若干頭の回線バグッてるかもしれねぇー。はは、はははー…ヤバい、割りとマジで。


昼過ぎ辺りから何だか世界が逆さに回りだし、身の危険を感じた俺は1人、屋上で涼んでる。


頬を撫でる風が心地よすぎて、程よい睡魔と…吐き気が…


よし、寝よう。寝てこの胸のムカムカと綺麗さっぱりオサラバしよう。それしか俺が助かる道はねぇ。


あぁ…目が覚めても、あの最高の気分を忘れてなきゃ良いな…


―――――----


「グォー…グァー…スピー…」


“バキッ!!”


「ホォガッ?!…いってー…」


ん…何処だここ。屋上?何で俺こんな所で寝てるんだ?やっべぇ全然覚えてねぇよ…


ってか、え?船長何でそんな険しい顔してんの?!俺また何かやらかした?!


「シャチ起きろ。一刻を争う」


走れるか。俺を蹴り起こした船長がそう問い掛けてきたけど、それは有無を言わさぬオーラを放っていて…俺ちょー困惑。


「今はとにかく時間が惜しい」


来い。って屋上から飛び降りる船長を慌てて追う。


船長は長刀、俺はジャックナイフを数十メートル伸びる壁に上手く滑らせて、着地の衝撃を和らげつつ、地に足着いた瞬間駆け出す船長の背中をとりあえず追いかけた。一体何だ?


「…おえっぷ」


うぷ…急に走り出したせいか…なんか込み上げてきそう。


顔を青くしつつ、もう慣れたこの胸のムカムカを一端放置。頑張って放置!!


「あ…」


咄嗟の事で雑に扱っちまった…チラッと手元のジャックナイフを確認すると、刃こぼれ一つ無い鋭利な輝きがそこに在り、やっぱコイツ最高ッ!!なんて1人ニヤニヤしちまった。


船長はそんな背後の俺を余所に、一度で理解しろ。って真剣な面持ちで言い、何やら小さな瓶を俺にポーイ。


何だ?これ確か薬品収集用の保管瓶だよな…え、まさか俺に危険物捕りに行かせる気?!やだぁ…


化学熱傷とかなったら最悪だ…落ち込む俺に目もくれず続けた船長の言葉に俺、驚愕ッ!!


「ミラーがC・キッドと?!」


「…合意の上だ、心配するな。恐らく奴等は船に向かった。1滴で良い。必ずそいつにミラーの血を採ってこい」


それ以上の事は何もするな。強く言い放たれ俺呆然…何もするなって何だよ船長…助けるんじゃねぇの?!合意の上って?!嘘だろ!!


オロオロする俺を無視して、淡々とC・キッド達が向かった方角を伝える船長の真意が分からない。


「船長ッ?!ミラーを取り戻しに行くんじゃないんすか?!」


一度で理解しろとか無理に決まってんじゃん!!現状に頭が着いていけない俺に船長は一瞬だけその鋭い目線を寄越し、そして力強く言い放った。


「戻ったら説明してやるッ…足りねぇ頭で考えろ!!今お前がすべき事は何だ?!お前のその足は何の為に有る!!」


分かったら走れ!!そう声を荒らげられハッとした。


俺の足は…船長が俺を頼るのは…!!


「俺の姿、アイツ等にバレちゃっても?」


構わねぇ。その言葉を合図に俺は全速力で駆け出した。


胸のムカムカ?そんなのとっくに忘れたっての。



ハート1の…



(もしアイツ等が抗戦してきたら…だぁ!!駄目だ!!無駄な事は考えるな俺!!)

(相変わらず速ぇ野郎だ…)

(ミラーの血ミラーの血ミラーの血…)

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