BOOK3
□No.20
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「ハァハァハァ!!」
こんなに必死に走るのは、ミラーが撃たれた時以来だ。今回もアイツが原因かよッ…手のかかる妹だな本当!!
船長が示した方角をひたすら進むと、その先に広がる深い森が纏う暗がりに、派手な赤が溶け込んでいこうとするのが見えた。
その後ろに2つの人影…あれだッ!!
「ミラーー!!ッ?!」
俺が声を発した瞬間、妖しく光る刃が凄い速さで突っ込んで来たが…俺も自分の勢い付いたスピードを殺す事が出来ず、かわすって選択肢が取れねぇ!!
“ガキーンッ”
「あっぶね?!いきなり何だよ!!ってお前?!殺戮武人?!」
寸での所でジャックナイフを取り出し迫る刃の軌道をズラしたが、互いに凄いスピードでぶつかり合ったから、体に来る衝撃が半端無い…
未だ手が痺れてる俺とは逆に、向き合う殺戮武人は…多分何とも無いんだと思う。悠々と立ちはだかってやがるし…顔見えねぇけど。
「よく今のを見切ったな。瞬発力はある様だが…力不足だ」
ムッカ!!何だよ偉そうに!!
…駄目だ抑えろ俺、今はミラーの血の事だけ考えろ!!
『シャチ?!何でここに居るの?!』
ミラーの血ミラーの血ミラーの血!!呪文の様に唱える俺にミラーが駆け寄って来る。
ミラーの血ミラーの血ミラーの…え?
そしてその頬に浮かぶ見覚えのあるマークを見て、俺の呪文は途絶えた。
「何だ?お前トラファルガーん所の奴か。ソイツを連れ戻しにでも来たのかよ」
奥で赤い悪魔が鼻で笑いながら声を発してきたけど、今の俺には届かない…
(それ以上の事は何もするな)
そう言う事かよ…どっちだ?C・キッドか?殺戮武人か?クッソ!!
…駄目だ、俺の役目はここでアイツ等とやり合う事じゃねぇだろッ?!
「ミラーお前の血が要る!!アイツ等にバレんなよ?!さりげなくやれ!!」
ボソッと小さくまくし立てると、ミラーは最初こそは困惑した表情だったが、何かを察した様に口を結び…そっと俺の手に納まるジャックナイフの刃に指を滑らせた。
刃先が僅かに赤く染まったのを確認して、俺は勢い良く踵を返し再び走り出す。
「お前等ミラーに傷一つ作ってみろ!!ぶん殴ってやるからな!!」
そんな安い捨て台詞を吐いて。