BOOK3
□No.29
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「アイツが本当にジロンギーの野郎を欲しがってたとはな…」
昨日受け取った地図を見ながら、2人で狸ジジィの家を目指す途中、俺はミラーから昨日俺と離れた後の出来事を聞いていた。
『すごいジギーの事誉めてたよ!!よっぽど気に入ったんだねッ』
自分の身内が認められた事が、コイツは余程嬉しいのだろう。終始笑顔で話を進めるミラーを余所に、俺はため息を吐いた。このブラコンが。
「で…お前あの時、アイツに何て言われてたんだよ」
へへ、早くジギーに手紙出そ。そう上機嫌のミラーに、俺はずっと気になっていた事を聞いた。
『あの時?』
いつの事だ?などとよく分かってないコイツに、最後何か耳打ちされてただろ。そう言い放つ。
するとコイツは一気に顔色を変え、分かりやすく慌てだしやがった。
『べ、別に大した事じゃないよ?!はは、はははッ!!』
あッ!!ロー道こっちだって!!なとど、コイツはあからさまに話を逸らすが…逆効果だろ、それ。
「ミラー、3度目はねぇ…」
言え。口元だけ笑みを見せ俺が告げる。普段なら2度目すらねぇ…今日は特別に猶予をやるよ。
『…私が…見せた訳じゃ、無いからね?』
威圧的な雰囲気を隠さない俺の目を見て観念したのか、ミラーが罰の悪そうな顔をし、俺から視線を外した後…僅かに言い淀むも静かに言葉を溢した。
『“右胸に双子星”』
ボソッと呟いたその言葉に、俺は思わず反応する。それは今朝、初めて見たミラーの身体に刻まれていたもの…
「…何であの野郎が知ってんだよ」
一気に不機嫌な声色になった俺にミラーが必死に訴えかける。
『た、多分ジギーの奴が言ったんだと思う!!私、絶っ対見せてないからッ!!』
当たり前だ。俺より先にあの野郎が見たなんざ言いやがったらバラしてやる。にしても…ジロンギーの野郎…
「お前それ、自分から誰かに言うなよ」
一生懸命身の潔白を説明するミラーに強く念を押す。右胸の上部にある双子星…2つの並んだ小さなホクロ。
夢中でミラーの服を剥ぎ取り、見た目以上に膨らんだ其処にあったその双子星が、妙に色気を放っていて思わず高ぶった…そんな事は言わないでおく。
あれの存在を知るのは俺1人で充分だ。よりによってユースタス屋が知ろうとは…気に入らねぇ。