BOOK3
□No.32
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「あらあら、カキッつぁんの好きそうな姉ちゃんじゃない」
「ふんッ、そこのガキが邪魔やがな」
そりゃ残念だったなぁカキッつぁん。頭をポリポリ掻きながら、のんびりジイさんと会話を続ける男を睨み付ける。冷や汗が止まらない。
何でこんな所で大将“青雉”に会わなきゃなんないの…
「…謀りやがったな」
ローが苦々しく呟く。その顔には普段見せない影を作ってた。
ローの奴も、いつでも能力を解放できるよう構えてはいるものの、いかんせん狭すぎる…まずはこの家から出るしかない。
「ワシの話に終始耳を傾けとるガキがおる中、わざわざ丁寧に本当の事教えちゃる程ワシャ甘く無い」
私が必死に逃げ道を探してる中、ジイさんが鼻で笑いながら嫌味ったらしくそう言ってきたけど…何の事だか分からない。隣でローの舌打ちだけが響いた。
唯一備え付けられてる扉には、青雉が塞ぎ立っている…ってかこの家、コイツには小さいんじゃね?首曲がってるよ…
壁をブッ壊すしかない。隣で構えるローに、後ろの壁を狙えと耳打ちしようとした瞬間…ダルそうに私を目で捉えた青雉が、こちらに向かって言葉を発した。
「参ったねこりゃ…何で姉ちゃんがソレ持ってんの」
収まりきらない首を窮屈そうに傾けながら、青雉が私の牙を指し聞いてきた。
「センコウ等の娘なんやと」
相変わらず、ズズゥー…とお茶を飲みながらジイさんが答える。
「クロスロードねぇ…じゃーもしかして、解体師は姉ちゃんの身内かい?」
『…そうだって言ったら?私達を捕まえるってか』
ブウォン…私が牙を青雉に向けると同時に、ローもその手に小さなサークルを発生させた。
「ワシの家潰したら張り倒すぞ」
まだ手を付けて無かったローの湯飲みに手を伸ばしながらジイさんが言う。多分、本気。このジイさんも何者?!
「カキッつぁん、一回潰して建て直しなよ。この家、俺には小せぇ」
肩が凝っちまう。そう言うと青雉は、ヨイショ…って事もあろうか、その場に横たわり始めた…嘘でしょ。
「…舐めてんのか」
あまりにもふざけた体勢で私達と向き合う青雉に、ローが青筋を浮かべ刀の柄をゆっくり押し上げる。私は未だにポカーン。