BOOK3

□No.35
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「状況は」


「特に動きは無い。ただ、船長を狙って来たらしいチンピラ共は…」


そう言って廊下で偵察をしていたペンギンが指した窓を見やると、大きめの窓硝子には人一人は優に抜けれるであろう、巨大な風穴が空いていた。


そこから下を覗き見ると、奴の返り討ちにあったというチンピラ共が数人横たわっているのが見える。


「少しでもアイツに手傷を負わせればと思って放っておいたが…」


奴等じゃ、やはり役不足だったな。そう淡々と述べペンギンは角の…俺とミラーの部屋に視線を送った。


「殺り合いに来た訳では無いようだが…」


「そうだろうな…」


面倒な話にならなきゃ良いが。そう思いながら俺はペンギンを引き連れ、部屋の扉を勢い良く開けた。


「挨拶も無しかよ」


「ここは俺の部屋だ。お前こそ挨拶するべきじゃねぇのか」


ソファーにムカつく程堂々と腰を据え、テーブルに足を投げ出しながら酒を飲んでいる男へと、鼻で笑って言い放つ。


奴も負けじと口角を上げ、俺に言葉を投げ掛けてきた。


「2人で仲良くお出掛けたぁ、随分頭ん中ボケてるみてぇだな。残忍で名の通るお前も所詮その程度か」


その言葉にピクッと後ろのペンギンが反応を示す。俺は今にも飛び出さんばかりのペンギンを目で抑止し、再び正面へと向き合った。


「その程度がどれ程か…試してみるか?」


殺気を含ませ睨み付ければ、奴は拍子抜けする程アッサリ引いた。


「今お前等に手ぇ出すと、うるせぇ奴がいるからよ…命拾いしたな」


そう笑い、奴は再び酒を飲み進めだす。


「仲間の言い付けを守るたぁ、お前も噂程尖っては無いらしいな…ユースタス屋」


小馬鹿にする様に言ってやれば、奴は、ダンッ!!と激しく酒瓶をテーブルに叩き付け、妖しく笑い俺に視線を寄越してきた。


「どこまでもムカつく野郎だな…まぁ、今お前に用はねぇ」


アイツは何処だ。そう首を鳴らすコイツの目的はやはりミラーか…いや、ジロンギーと言った方が正しいな。


「お前、解体師にフラれたらしいな。次いで首刈りにもフラれるたぁ…随分嫌われてるな」


「ハッ、何も俺はあのクソガキを抜きに来たんじゃねぇよ」


だったら何の為に、わざわざ此処まで足を運んだって言うんだよ。


尚も緊迫した空気で互いに引かず、睨み合いが続く中、後方の扉が開く気配が…


そして響く気の抜けた声に、俺は頭が痛くなってきた。



その目的



(ロー?あの窓私達が弁償す、って…あれ、スーパー問題児。何してんのアンタ?)

(…相変わらず緊張感のねぇクソガキだな)

(………)

(船長、気持ちは分かるが…落ち着いてくれ)
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