BOOK3
□No.38
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「お前等、ガキの頃から抜けてたんだな」
情事の後…以前繋がった時とは、また違う意味での疲労感が全身を襲う。
帰り道から今に至るまでの間に、洗いざらい私の生い立ちを吐かされ、私は最早本当の意味で心も体もスッポンポン…今の私なら素っ裸で街歩けるわ。はは、ははは。
「にしても…ジロンギーの野郎が殺ったのは、村の人間だったのか」
よく問題にならなかったな。私の頭を擦りながら、呆れ気味にそう言うロー。
『あぁ、あれは…シャラクが…証拠隠滅したからね。いや〜流石元軍人だけあって、素晴らしい手際だったよ』
ははは。と感情を込めず笑えばローも呆れて笑うかと思えば、難しい顔をして私の頬に手を移動させた。
「辛いか?」
頬を包むローの手が温かい。
辛い?何の事だ?あ、身体?え…まさか初体験の相手がバラバラにされたのが?
…いやいや、ローに限ってそれは無いな。
何の事か分からない。って困惑して視線を合わせる私にローは目を伏せ、自分じゃ気付かねぇか…と静かに話し出した。
「お前…これまで俺に話した内容、覚えてるか?」
心なしかローの声色が柔らかい。それはまるで、私を気遣う様な…何でだ?これまで話した内容?うーんと…
ジギーと山で隠れんぼしてる時、洞穴で寝ちゃって起きたら熊が隣に居たとか…
鍛練で足を挫いてジギーにおぶさって帰る途中、ジギーが転けて2人で全治3週間の怪我したとか…
ジギーと野兎追いかけてたら迷子になって、9日間サバイバル生活したとか…あぁ、一回ふざけて互いの牙を交換したら、2人とも見事に死にかけたって話もしたっけ?
『………?』
あれ…?そう言えば、さっきからジギーとの話ばっかりだな…
「気付いたか」
私の表情の僅かな変化を読み取ったらしいローがそう声を掛ける。
「今まで、お前はシャラクとの思い出話をした事はねぇんだ」
諭す様に優しく話すロー。
「お前の口から、シャラクとの生活を振り返った話を…聞いた事がねぇ」
そう…だっけ?
「ジロンギーの野郎が以前ベポに、お前の牙は大事な人の形見。そう話したらしいが…そりゃ親の事じゃねぇんだろ?」
私の牙?私の牙は父親から受け継いだ、大切な相棒で…別にシャラクは関係ないよ。シャラクは…
『ローッ。確かにシャラクの話、全然してなかったね!!何でだろ?ジギーとの思い出が強すぎるからかな?』
随分2人で馬鹿やったもんなぁ。って私がごく自然に笑っても、ローの表情は何故か未だ固いままだった。