BOOK3
□No.39
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「ゴラァ!!テメェ等ッ!!また抜け出しやがったな?!」
『キャー!!怪獣シャラクが現れたッ!!隊長ッ、逃げますか?交戦しますか?!』
「ミラー隊員…逃ぃげろーッ!!」
「ちょッ、待ちやがれ!!」
「『ギャー!!ハハハハッ』」
サウスブルーに位置する、漁業を主な生業とした小さな島。此処は私達の育った島。
物心付いた頃から山で狩りを仕込まれ、ジギーが9歳、私が8歳の時には2人で山の主を倒した。
「逃げ足ばっか鍛えやがって…良いか?!この山はサウスブルーで1番レベルの低い山なんだ。そこの主倒したぐらいで満足すんな!!」
「でも俺が優秀なのは事実だし」
『それにコレ使いにくいし。私普通のナイフとか、剣の方が良い…コレちょっと…』
「『ださいッ』」
「……ぶっ殺すぞ」
当時から私達の武器は牙だった。でもそれは今の黒と白では無く、与えられていたのはナイフサイズの猛獣の牙。
扱いにくい牙に悪態つく度言われた台詞…
「良いか?お前等はそのうち、スッゲェ相棒を手にするかもしれねんだ。そん時相棒に、プーンッ!!なんてされたら悲しいだろ?!だからッ。今の内に牙ってもんに慣れとけ!!」
『プーンッ!!ってされたら、私もペーンッ!!ってするから良いもんッ』
「俺の相棒はこーーっんなデカイ奴にする!!やっぱデカイ方がかっけぇよな!!」
「……はっ倒すぞ」
毎日毎日牙の扱い方や組み手の方法、肉の削ぎ方から獲物と対峙した時の身のこなし方まで、本当様々な事を叩き込まれた。
『ねぇジギー、何でシャラクは山での狩りばっか教えるのかなぁ。漁業は全然教えてくれないのにねぇ』
「なぁ。ま〜生きる知恵!!って言っても、こんな魚ばっか捕ってる島で狩りを教わってもな〜」
私達の獲物は森に住む猛獣達。そう信じ疑ってなかった。
この頃は、まさかシャラクの教えが後々、人を狩るための技術になるとは夢にも思っていない…
「ジギー、ミラー。今日は海で遊ぼうぜッ!!」
「『…嫌な予感』」
「題して…誰が1番早くエグり崖を登りきるでしょうかゲェーム!!いえーいッ」
「『海関係なくねッ?!』」
「失敗して落ちてもコバルトブルーの美しい海だ。楽しいだろ?」
「『楽しくねぇよ!!』」
「何でだよ。綺麗な魚もイッパイいるじゃねぇか」
『いやいや何で落ちる事前提?!ってか、あのエグり崖は登るものじゃないよ?!分かってる?!』
「人は言った。崖を登る理由か?そこに…崖があるからだ!!」
「『言ってねぇよ!!』」
たまに無茶苦茶な事を言い出すシャラクだったけど、そんなシャラクを心から慕ってたし、私もジギーも両親が居ない事に、寂しさも劣等感も全く無かった。
「良いからサッサと行くぞッ!!」
「『いでッ?!グーパンは無し!!』」
だって、シャラクが側に居てくれたから。
そう、いつだってシャラクは私達と一緒に居てくれた…
「お前等、2人がかりで俺に傷一つつけれないのか?全く…弱々ピーちゃんだな。あッ、俺が強すぎんのか!!わりぃわりぃ。手加減してあげまちゅからねー」
「『むぎゃーッ!!』」
「元軍人だか何だか知らねぇけど?!ぜってぇ鼻の穴膨らませてやる!!」
『踏み込みも無しに姿消すのは狡いでしょ?!なに自慢?!そんなの教わってない!!』
「これは育ち盛りのお前等にゃ、まだ早いんだよ。ほら、片手でやってやるから。来な」
私が10歳を迎えた年から始まった、山での鍛練を終えてから行われるシャラクとのやり合いは正直、結構楽しかった。
勿論、毎回ズタボロになるのは私とジギーだけ。
「ははッ、もうヘバッたのか?んじゃあ今日はそろそろ飯にするか」
「『ヤッターッ!!』」
この頃は毎日、本当に心から満たされていた。
明日はどうやってシャラクの鍛練をサボろうかって、ジギーと案を出しあうのが就寝前の日課で…私の案ではほぼ毎回捕まってたな。