BOOK3
□No.40
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私達が牙を受け取ってから、丁度1年が過ぎた。
この頃から私達は“力を持つ者の使命”と称して、それぞれの正義を掲げるようになっていた。
「はぁッ!!ふぅ…お前等、大分ソイツが様になるようになってきたな」
「当たり前だろ?最近は早朝時間作って、わざわざ沖まで出てよぉ、馬っ鹿みてぇに暴れる海賊共狩ってんだ」
『私は理不尽な略奪者刈るだけッ。馬鹿みたいに暴れるのはジギーだから』
「海賊なんざ元から犯罪者だろ?ソイツ等潰して何が悪いんだよ」
「ははは、どっちが海賊か分かんねぇな…まるでどっかの暴れ馬だ。それよりお前等…あの約束は守ってんだろうな」
『はいはい誰にも牙を見せるな、見た奴は確実に消せ』
「海軍の奴等には絶対に手を出すな、姿を見られるな。だろ?」
『シャラクにしては乱暴な命令だけど、ちゃんと守ってるよ』
「だいたい海軍にって、お前も元海兵じゃねぇかよ」
「そうだがな…お前等、無法者にそれなりの嫌悪感抱いている様だが…海軍に入りたいと、思ったりするのか?」
「『いや全然?』」
「即答かよッ」
「俺、組織に属するなんざ向いてねぇし」
『私も自由にやりたいし』
「ハハッ…成る程な」
「何だよ、自分の古巣に俺等も入ってほしかったか?」
「いや全く。むしろ全力で反対したな…お前等を海兵にする訳には、いかない」
『…ねぇシャラク、そろそろ話してくれても…良いんじゃない?』
「そうだなシャラク。お前ここん所急激に老け込んだぞ?もういい加減吐いちまえよ」
相変わらずシャラクは、度々家を空ける生活を送っていた。
ただ…この頃から、おびただしい返り血と共に、負傷し戻ってくる日も少なくなかった。
その場でいくら問い詰めてもシャラクは絶対口を割らず、私とジギーの苛立ちは募るばかりで…
「…そうだな」
『シャラク?やっぱり何か問題でもあるの?!そんな険しい顔して…』
「何だよ、俺達じゃ頼りねぇってか?」
「ジギー……鼻毛出てるぞ」
「だッ、出してんだよ!!お洒落だ!!」
『そッそうなの?!』
「嘘だよ!!乗るなッ!!話変えんじゃねぇよシャラク!!」
『はッ!!そうだった!!シャラク?!』
「分かった分かった…今夜…教えてやるよ。俺がここ数年外でやっていた事、牙について…そして、お前等のことも」
『私達の…こと?』
「さぁ、とりあえず!!いつも通り鍛練して来い。ミラー、力加減を見誤るなよ?ジギー、脚力を生かせ…行ってこい」
「…はぁ、分かったよ。ミラー行くぞ」
『え?でも、ジギーッ…!!』
「シャラク、帰るまでに話す内容、まとめとけよ?」
「おー。パーチクリンのお前等でも理解出来るように、分っかり易くまとめといてやるよ。エグり崖ダッシュも忘れんなよー」
「『ッ?!鬼!!』」
「もう綺麗な魚は見飽きただろ?ふふ、行ってこい」
眉間に困った様な皺を刻み、優しく目尻を下げて私達を送り出すシャラク。
「『はぁ…へーい』」
私達が元気なシャラクの姿を見たのは、これが最後だった。
私は呑気にエグり崖攻略法などを考えていたのに…
私の大好きな笑顔でこの背中を見送るシャラクを、何故この時無理矢理にでも問い詰めなかったのだろう。